コラム
社会保険の添付書類の廃止や署名・押印の省略の動き
現在、行政手続きのコスト削減のための様々な取組みが進められています。資本金1億円超等のいわゆる大企業では、2020年4月1日以後に開始する事業年度から電子申請が義務化されるなど、電子化による効率化、生産性の向上は注目のポイントとなっています。一方、電子化以外にも手続き自体の省略や、添付書類の省略が認められるようになっていることから、ここではそうした動きについて確認しておきましょう。
1.添付書類の廃止
社会保険の手続きでは添付書類が求められるものがありますが、今回、以下に該当する手続きについて添付書類が廃止されることとなりました。
①資格喪失届および被保険者報酬月額変更届
の届出の受付年月日より60日以上遡る場合
②既に届出済である標準報酬月額を大幅に引き下げる場合
なお、添付書類の廃止に伴い、事業所が適正な届出処理を行っているかを確認するため、年金事務所が適用事業所の調査を重点的に行うことにしています。添付書類を用意すること自体は不要ですが、該当するような手続きの場合には、必ず確認の記録を残しておきましょう。
2.署名・押印等の省略
社会保険の届出は、事業主が提出者となるものと、被保険者等の申請者が事業主を通じて提出するものがあり、後者については申請者の署名または押印が必要になります。
次の届出の署名または押印は、事業主が申請者本人が届出を提出する意思を確認し、各届書の備考欄に「届出意思確認済み」と記載することにより、省略することができるようになりました。
①被保険者生年月日訂正届
②被扶養者(異動)届・第3号被保険者関係届
③年金手帳再交付申請書
④養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(申出の場合)
⑤養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(終了の場合)
なお、電子申請および電子媒体による申請では、署名または押印ではなく委任状を添付することになっていますが、この委任状が省略できることになりました。
3.適用開始時期と留意点
1および2の内容は2019年3月29日に、厚生労働省から日本年金機構へ通達されています。
通達の内容を確認すると、通達された日から適用されるように判断できますが、一方で2019年9月1日までは従前の例によることができるという記載もあり、年金事務所や事務センターによっては当面の間、添付書類や署名・押印が求められることもあるようです。
実務上は、管轄の年金事務所や事務センターに省略が認められるかを必ず確認の上、手続きを行うようにしましょう。
現状、届出書に被保険者等の署名または押印をもらうために、事業主と従業員の間で書類のやり取りが行われ、手続きが煩雑になったり、手続きに時間を要することになっています。
2のような取扱いにより、自社での書類の流れを整理し、業務効率化を目指したいものです。
(次号に続く)
社会保険の添付書類の廃止や署名・押印の省略の動き
現在、行政手続きのコスト削減のための様々な取組みが進められています。資本金1億円超等のいわゆる大企業では、2020年4月1日以後に開始する事業年度から電子申請が義務化されるなど、電子化による効率化、生産性の向上は注目のポイントとなっています。一方、電子化以外にも手続き自体の省略や、添付書類の省略が認められるようになっていることから、ここではそうした動きについて確認しておきましょう。
1.添付書類の廃止
社会保険の手続きでは添付書類が求められるものがありますが、今回、以下に該当する手続きについて添付書類が廃止されることとなりました。
①資格喪失届および被保険者報酬月額変更届
の届出の受付年月日より60日以上遡る場合
②既に届出済である標準報酬月額を大幅に引き下げる場合
なお、添付書類の廃止に伴い、事業所が適正な届出処理を行っているかを確認するため、年金事務所が適用事業所の調査を重点的に行うことにしています。添付書類を用意すること自体は不要ですが、該当するような手続きの場合には、必ず確認の記録を残しておきましょう。
2.署名・押印等の省略
社会保険の届出は、事業主が提出者となるものと、被保険者等の申請者が事業主を通じて提出するものがあり、後者については申請者の署名または押印が必要になります。
次の届出の署名または押印は、事業主が申請者本人が届出を提出する意思を確認し、各届書の備考欄に「届出意思確認済み」と記載することにより、省略することができるようになりました。
①被保険者生年月日訂正届
②被扶養者(異動)届・第3号被保険者関係届
③年金手帳再交付申請書
④養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(申出の場合)
⑤養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(終了の場合)
なお、電子申請および電子媒体による申請では、署名または押印ではなく委任状を添付することになっていますが、この委任状が省略できることになりました。
3.適用開始時期と留意点
1および2の内容は2019年3月29日に、厚生労働省から日本年金機構へ通達されています。
通達の内容を確認すると、通達された日から適用されるように判断できますが、一方で2019年9月1日までは従前の例によることができるという記載もあり、年金事務所や事務センターによっては当面の間、添付書類や署名・押印が求められることもあるようです。
実務上は、管轄の年金事務所や事務センターに省略が認められるかを必ず確認の上、手続きを行うようにしましょう。
現状、届出書に被保険者等の署名または押印をもらうために、事業主と従業員の間で書類のやり取りが行われ、手続きが煩雑になったり、手続きに時間を要することになっています。
2のような取扱いにより、自社での書類の流れを整理し、業務効率化を目指したいものです。
(次号に続く)
年次有給休暇と子の看護休暇の違いの整理
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社会保険労務士とその顧問先の 総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:4歳の子どもを育てる従業員から、子どもが体調不良で病院に連れて行きたいので、
子の看護休暇を取りたいという申し出がありました。当社の子の看護休暇は無給の
ため、年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得を勧めようと思いますが、問
題ありませんか。
社労士 :年休と子の看護休暇の内容について整理をしておきましょう。年休は入社してから
6ヶ月経過し、その期間の全労働日の8割以上を出勤した場合に付与される有給の休
暇のことです。ストレス解消やリフレッシュの目的で付与される休暇ですが、取得
目的は特に問われません。
総務部長:当社でも取得目的は様々で、旅行や銀行・役所に行く必要のある用事、自分の体調
不良等があります。
社労士 :そうですね。一方、子の看護休暇は小学校に入学する前の子どもを育てている従業
員が、子どもが病気になったりケガをしたりしたときに、看護のために取得できる
休暇です。取得目的には子どもに予防接種や健康診断を受けさせることも含まれて
いますが、これらの内容に限られています。なお、取得した日については無給でも
構いません。
総務部長:そうですね。確か取得できる日数は、対象となる子どもが1人のときは1年に5日、2
人以上のときは年に10日でしたよね。
社労士 :はい、その通りです。他にも細かな違いがありますが、年休は取得目的が問われな
いのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定される点が従業員にとっては大きな違
いになります。例えば、子の看護休暇は今回のように子どもが体調不良のときに取
得できますが、自分が体調不良のときには取得できません。
総務部長:そうか、なるほど!申し出をしてきた従業員は、確かに年休があと1日しか残ってい
ないと言っていました。
社労士 :そうでしたか。もしかしたら年休は、子どもの体調不良以外の理由で休みを取得し
たいときに残しておきたいと考えているのかも知れませんね。
総務部長:そうですね。良かれと思って年休の取得を勧めようと考えていましたが、従業員な
りに考えて申し出たことだと思いますので、このまま子の看護休暇で処理します。
社労士 :それが良いでしょう。ちなみに、子の看護休暇は無給で構いませんが、欠勤とは違
い従業員の権利として取得できます。また、取得したことで会社が不利益な取扱い
をすることは禁じられていますので、賞与の査定で勤務成績をマイナス評価にする
ようなことがないようにご注意ください。
総務部長:無給であると欠勤と変わらないと思われがちですが、大きな違いがありますね。あ
りがとうございました。
【ワンポイントアドバイス】
1. 年休は取得目的が制限されないのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定的である。
2. 年休は有給の休暇であるが、子の看護休暇は無給でも構わない。
3. 子の看護休暇を取得したことに対し、不利益な取扱いをしてはならない。
(次号に続く)
年次有給休暇と子の看護休暇の違いの整理
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社会保険労務士とその顧問先の 総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:4歳の子どもを育てる従業員から、子どもが体調不良で病院に連れて行きたいので、
子の看護休暇を取りたいという申し出がありました。当社の子の看護休暇は無給の
ため、年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得を勧めようと思いますが、問
題ありませんか。
社労士 :年休と子の看護休暇の内容について整理をしておきましょう。年休は入社してから
6ヶ月経過し、その期間の全労働日の8割以上を出勤した場合に付与される有給の休
暇のことです。ストレス解消やリフレッシュの目的で付与される休暇ですが、取得
目的は特に問われません。
総務部長:当社でも取得目的は様々で、旅行や銀行・役所に行く必要のある用事、自分の体調
不良等があります。
社労士 :そうですね。一方、子の看護休暇は小学校に入学する前の子どもを育てている従業
員が、子どもが病気になったりケガをしたりしたときに、看護のために取得できる
休暇です。取得目的には子どもに予防接種や健康診断を受けさせることも含まれて
いますが、これらの内容に限られています。なお、取得した日については無給でも
構いません。
総務部長:そうですね。確か取得できる日数は、対象となる子どもが1人のときは1年に5日、2
人以上のときは年に10日でしたよね。
社労士 :はい、その通りです。他にも細かな違いがありますが、年休は取得目的が問われな
いのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定される点が従業員にとっては大きな違
いになります。例えば、子の看護休暇は今回のように子どもが体調不良のときに取
得できますが、自分が体調不良のときには取得できません。
総務部長:そうか、なるほど!申し出をしてきた従業員は、確かに年休があと1日しか残ってい
ないと言っていました。
社労士 :そうでしたか。もしかしたら年休は、子どもの体調不良以外の理由で休みを取得し
たいときに残しておきたいと考えているのかも知れませんね。
総務部長:そうですね。良かれと思って年休の取得を勧めようと考えていましたが、従業員な
りに考えて申し出たことだと思いますので、このまま子の看護休暇で処理します。
社労士 :それが良いでしょう。ちなみに、子の看護休暇は無給で構いませんが、欠勤とは違
い従業員の権利として取得できます。また、取得したことで会社が不利益な取扱い
をすることは禁じられていますので、賞与の査定で勤務成績をマイナス評価にする
ようなことがないようにご注意ください。
総務部長:無給であると欠勤と変わらないと思われがちですが、大きな違いがありますね。あ
りがとうございました。
【ワンポイントアドバイス】
1. 年休は取得目的が制限されないのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定的である。
2. 年休は有給の休暇であるが、子の看護休暇は無給でも構わない。
3. 子の看護休暇を取得したことに対し、不利益な取扱いをしてはならない。
(次号に続く)
働き方改革に取り組む中小企業が人材を確保する際に活用できる助成金
新年度となり、さまざまな助成金制度が新設・変更されていますが、中小企業対象の注目の助成金として、「人材確保等助成金(働き方改革支援
コース)」が新設されました。これは人材の雇入れに対する助成金制度で、活用する場面も比較的多いと思われますので、以下ではこの制度の概要をとり上げましょう。
1.助成金の概要
この助成金は、働き方改革を進める上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新しく労働者を雇入れ、人材の配置の変更、労働者の負担軽減に取り組む場合に助成されるものです。
助成金の対象となる事業主は時間外労働等改善助成金の支給を受けた中小企業です。具体的には平成29年度であれば旧職場意識改善助成金の指定されたコース、平成30年度以降であれば時間外労働等改善助成金の指定されたコースの支給を受けていることが必要です。
なお、平成31年度以降に指定されたコースの支給を受けた事業主も対象になります。
2.助成額
助成金を受給するためには、労働者を初めて雇入れる予定日の属する月の初日の6ヶ月前の日から1ヶ月前の日の前日までに、雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。
その後、認定された雇用管理改善計画に基づき、新たな労働者を雇入れた上で、雇用管理改善を実施し、1年間取り組んだ後に申請することで、各種要件を満たした場合に「計画達成助成」、計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たした場合に「目標達成助成」が支給されます。支給額は以下のとおりです。
[計画達成助成]
雇入れた労働者1人当たり60万円
短時間労働者※1人当たり40万円
支給対象となる労働者は10人を上限とし、
雇用管理改善計画認定通知書に記載された認
定金額を上限に支給されます。
[目標達成助成]
労働者1人当たり15万円
短時間労働者※1人当たり10万円
ただし、支給の算定人数の上限があります。
※週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者
3.活用にあたっての注意点
新たに労働者を雇入れても、計画開始前後の労働者数を比較し、人員増とならない場合には助成金が支給されないなど、細かな要件が設けられています。そのため、活用を検討している場合は、事前に要件を確認しておきましょう。
この助成金を受給するための前提となる時間外労働等改善助成金の指定されたコースには、時間外労働上限設定、勤務間インターバル導入、職場意識改善の3つがあります。働きやすい環境づくりに向けて、労務管理担当者に対する研修、タイムカードなどの労務管理用機器や労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新などの取組みを予定している企業については、時間外労働等改善助成金への取組みをした上で、更に人材確保が必要なときには本助成金の活用を検討することになります。
(次号へ続く)
働き方改革に取り組む中小企業が人材を確保する際に活用できる助成金
新年度となり、さまざまな助成金制度が新設・変更されていますが、中小企業対象の注目の助成金として、「人材確保等助成金(働き方改革支援
コース)」が新設されました。これは人材の雇入れに対する助成金制度で、活用する場面も比較的多いと思われますので、以下ではこの制度の概要をとり上げましょう。
1.助成金の概要
この助成金は、働き方改革を進める上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新しく労働者を雇入れ、人材の配置の変更、労働者の負担軽減に取り組む場合に助成されるものです。
助成金の対象となる事業主は時間外労働等改善助成金の支給を受けた中小企業です。具体的には平成29年度であれば旧職場意識改善助成金の指定されたコース、平成30年度以降であれば時間外労働等改善助成金の指定されたコースの支給を受けていることが必要です。
なお、平成31年度以降に指定されたコースの支給を受けた事業主も対象になります。
2.助成額
助成金を受給するためには、労働者を初めて雇入れる予定日の属する月の初日の6ヶ月前の日から1ヶ月前の日の前日までに、雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。
その後、認定された雇用管理改善計画に基づき、新たな労働者を雇入れた上で、雇用管理改善を実施し、1年間取り組んだ後に申請することで、各種要件を満たした場合に「計画達成助成」、計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たした場合に「目標達成助成」が支給されます。支給額は以下のとおりです。
[計画達成助成]
雇入れた労働者1人当たり60万円
短時間労働者※1人当たり40万円
支給対象となる労働者は10人を上限とし、
雇用管理改善計画認定通知書に記載された認
定金額を上限に支給されます。
[目標達成助成]
労働者1人当たり15万円
短時間労働者※1人当たり10万円
ただし、支給の算定人数の上限があります。
※週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者
3.活用にあたっての注意点
新たに労働者を雇入れても、計画開始前後の労働者数を比較し、人員増とならない場合には助成金が支給されないなど、細かな要件が設けられています。そのため、活用を検討している場合は、事前に要件を確認しておきましょう。
この助成金を受給するための前提となる時間外労働等改善助成金の指定されたコースには、時間外労働上限設定、勤務間インターバル導入、職場意識改善の3つがあります。働きやすい環境づくりに向けて、労務管理担当者に対する研修、タイムカードなどの労務管理用機器や労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新などの取組みを予定している企業については、時間外労働等改善助成金への取組みをした上で、更に人材確保が必要なときには本助成金の活用を検討することになります。
(次号へ続く)
社会保険の添付書類の廃止や署名・押印の省略の動き
現在、行政手続きのコスト削減のための様々な取組みが進められています。資本金1億円超等のいわゆる大企業では、2020年4月1日以後に開始する事業年度から電子申請が義務化されるなど、電子化による効率化、生産性の向上は注目のポイントとなっています。一方、電子化以外にも手続き自体の省略や、添付書類の省略が認められるようになっていることから、ここではそうした動きについて確認しておきましょう。
1.添付書類の廃止
社会保険の手続きでは添付書類が求められるものがありますが、今回、以下に該当する手続きについて添付書類が廃止されることとなりました。
①資格喪失届および被保険者報酬月額変更届
の届出の受付年月日より60日以上遡る場合
②既に届出済である標準報酬月額を大幅に引き下げる場合
なお、添付書類の廃止に伴い、事業所が適正な届出処理を行っているかを確認するため、年金事務所が適用事業所の調査を重点的に行うことにしています。添付書類を用意すること自体は不要ですが、該当するような手続きの場合には、必ず確認の記録を残しておきましょう。
2.署名・押印等の省略
社会保険の届出は、事業主が提出者となるものと、被保険者等の申請者が事業主を通じて提出するものがあり、後者については申請者の署名または押印が必要になります。
次の届出の署名または押印は、事業主が申請者本人が届出を提出する意思を確認し、各届書の備考欄に「届出意思確認済み」と記載することにより、省略することができるようになりました。
①被保険者生年月日訂正届
②被扶養者(異動)届・第3号被保険者関係届
③年金手帳再交付申請書
④養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(申出の場合)
⑤養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(終了の場合)
なお、電子申請および電子媒体による申請では、署名または押印ではなく委任状を添付することになっていますが、この委任状が省略できることになりました。
3.適用開始時期と留意点
1および2の内容は2019年3月29日に、厚生労働省から日本年金機構へ通達されています。
通達の内容を確認すると、通達された日から適用されるように判断できますが、一方で2019年9月1日までは従前の例によることができるという記載もあり、年金事務所や事務センターによっては当面の間、添付書類や署名・押印が求められることもあるようです。
実務上は、管轄の年金事務所や事務センターに省略が認められるかを必ず確認の上、手続きを行うようにしましょう。
現状、届出書に被保険者等の署名または押印をもらうために、事業主と従業員の間で書類のやり取りが行われ、手続きが煩雑になったり、手続きに時間を要することになっています。
2のような取扱いにより、自社での書類の流れを整理し、業務効率化を目指したいものです。
(次号に続く)
年次有給休暇と子の看護休暇の違いの整理
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社会保険労務士とその顧問先の 総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:4歳の子どもを育てる従業員から、子どもが体調不良で病院に連れて行きたいので、
子の看護休暇を取りたいという申し出がありました。当社の子の看護休暇は無給の
ため、年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得を勧めようと思いますが、問
題ありませんか。
社労士 :年休と子の看護休暇の内容について整理をしておきましょう。年休は入社してから
6ヶ月経過し、その期間の全労働日の8割以上を出勤した場合に付与される有給の休
暇のことです。ストレス解消やリフレッシュの目的で付与される休暇ですが、取得
目的は特に問われません。
総務部長:当社でも取得目的は様々で、旅行や銀行・役所に行く必要のある用事、自分の体調
不良等があります。
社労士 :そうですね。一方、子の看護休暇は小学校に入学する前の子どもを育てている従業
員が、子どもが病気になったりケガをしたりしたときに、看護のために取得できる
休暇です。取得目的には子どもに予防接種や健康診断を受けさせることも含まれて
いますが、これらの内容に限られています。なお、取得した日については無給でも
構いません。
総務部長:そうですね。確か取得できる日数は、対象となる子どもが1人のときは1年に5日、2
人以上のときは年に10日でしたよね。
社労士 :はい、その通りです。他にも細かな違いがありますが、年休は取得目的が問われな
いのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定される点が従業員にとっては大きな違
いになります。例えば、子の看護休暇は今回のように子どもが体調不良のときに取
得できますが、自分が体調不良のときには取得できません。
総務部長:そうか、なるほど!申し出をしてきた従業員は、確かに年休があと1日しか残ってい
ないと言っていました。
社労士 :そうでしたか。もしかしたら年休は、子どもの体調不良以外の理由で休みを取得し
たいときに残しておきたいと考えているのかも知れませんね。
総務部長:そうですね。良かれと思って年休の取得を勧めようと考えていましたが、従業員な
りに考えて申し出たことだと思いますので、このまま子の看護休暇で処理します。
社労士 :それが良いでしょう。ちなみに、子の看護休暇は無給で構いませんが、欠勤とは違
い従業員の権利として取得できます。また、取得したことで会社が不利益な取扱い
をすることは禁じられていますので、賞与の査定で勤務成績をマイナス評価にする
ようなことがないようにご注意ください。
総務部長:無給であると欠勤と変わらないと思われがちですが、大きな違いがありますね。あ
りがとうございました。
【ワンポイントアドバイス】
1. 年休は取得目的が制限されないのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定的である。
2. 年休は有給の休暇であるが、子の看護休暇は無給でも構わない。
3. 子の看護休暇を取得したことに対し、不利益な取扱いをしてはならない。
(次号に続く)
働き方改革に取り組む中小企業が人材を確保する際に活用できる助成金
新年度となり、さまざまな助成金制度が新設・変更されていますが、中小企業対象の注目の助成金として、「人材確保等助成金(働き方改革支援
コース)」が新設されました。これは人材の雇入れに対する助成金制度で、活用する場面も比較的多いと思われますので、以下ではこの制度の概要をとり上げましょう。
1.助成金の概要
この助成金は、働き方改革を進める上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新しく労働者を雇入れ、人材の配置の変更、労働者の負担軽減に取り組む場合に助成されるものです。
助成金の対象となる事業主は時間外労働等改善助成金の支給を受けた中小企業です。具体的には平成29年度であれば旧職場意識改善助成金の指定されたコース、平成30年度以降であれば時間外労働等改善助成金の指定されたコースの支給を受けていることが必要です。
なお、平成31年度以降に指定されたコースの支給を受けた事業主も対象になります。
2.助成額
助成金を受給するためには、労働者を初めて雇入れる予定日の属する月の初日の6ヶ月前の日から1ヶ月前の日の前日までに、雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。
その後、認定された雇用管理改善計画に基づき、新たな労働者を雇入れた上で、雇用管理改善を実施し、1年間取り組んだ後に申請することで、各種要件を満たした場合に「計画達成助成」、計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たした場合に「目標達成助成」が支給されます。支給額は以下のとおりです。
[計画達成助成]
雇入れた労働者1人当たり60万円
短時間労働者※1人当たり40万円
支給対象となる労働者は10人を上限とし、
雇用管理改善計画認定通知書に記載された認
定金額を上限に支給されます。
[目標達成助成]
労働者1人当たり15万円
短時間労働者※1人当たり10万円
ただし、支給の算定人数の上限があります。
※週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者
3.活用にあたっての注意点
新たに労働者を雇入れても、計画開始前後の労働者数を比較し、人員増とならない場合には助成金が支給されないなど、細かな要件が設けられています。そのため、活用を検討している場合は、事前に要件を確認しておきましょう。
この助成金を受給するための前提となる時間外労働等改善助成金の指定されたコースには、時間外労働上限設定、勤務間インターバル導入、職場意識改善の3つがあります。働きやすい環境づくりに向けて、労務管理担当者に対する研修、タイムカードなどの労務管理用機器や労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新などの取組みを予定している企業については、時間外労働等改善助成金への取組みをした上で、更に人材確保が必要なときには本助成金の活用を検討することになります。
(次号へ続く)
リーダー職・管理者層の育成に関して、幹部の方から御相談をお受けすることがあります。「うちの現場のリーダーは、仕事は素晴らしいけど、部下からあまり信頼されていない」「部下に仕事を任せられなくて、自分で抱え込んでしまい部下が育たない」など・・・
職場の風土を創り出すためには、リーダーはとても大きな存在です。リーダーの振る舞い一つで、職場の雰囲気がガラッと変わることもよくあります。
介護業界に長年携わっている社労士として、今、介護現場に求められるリーダー像とはどんなリーダーなのかを、現場の多くの職員と話しながら一緒に考えてきました。それを形にした研修が「リーダーの職場実戦力&人間力向上研修」なのです。
職員の定着率を安定させるには、職場のリーダーはとても大きな存在です。ただ、そこには管理者のマネジメントスキルだけではなく、リーダーとして必要な「人間力」もまた求められます。
この研修では、リーダーが職場で抱える問題に対処出来る「マネジメント力」を身に付けて頂くと共に、リーダーシップを発揮するために必要な「人間力」も事例を通じて学んで頂きます。また、ワークを通じて、受講者の「気づき」を促し、各職場での実践力も養います。
介護リーダーに必要なマネジメント力(職場実践力)とは
例えば、介護現場では、いつも何かに追われているのが介護リーダーではないでしょうか?とにかく忙しい、介護リーダーの方々に、その役割を聞いてみると、様々なご意見を聞くことできます。
「スタッフの不安や不満を聞く役割」
「全体をまとめて引っ張る役割」
「介護職のまとめ役」
「上からも下からも不満をぶつけられる役目(板挟み)」
「休んだ現場スタッフの代わりに現場に入る役割」
「看護師(他職種)との連携係。連携というより調整業務」 など等。
主任やリーダーは、業務量が多く、一方では仕事に対する充足感や満足感を得ている人は少ないように思われます。また、自分がリーダーに向いていると、自信を持って言える人もなかなかいません。多くのリーダーが現状の課題に向き合う中で、日々悩み葛藤し、ご利用者の方々と接しているのが現状ではないでしょうか?
では、そもそも、リーダーに期待される本当の役割とは何なのでしょうか?
チームを引っ張る? スタッフをまとめる? 上司と部下のパイプ役?
では、これらは具体的にどのような行動を言うのでしょうか?
多くのリーダーや主任が、そんなイメージに縛られて見えない虚像と戦っているように思えてなりません。
一方、例えば、介護の現場では、求められる介護もユニットケアや小規模ケアが主流になるなか、ケアシステム自体も大きく変化してきています。その変化に対応するためには、期待される介護スタッフのあり方も、また変化しています。ご利用者の為に、今自分ができる事、すべき事は何なのかを、自分の頭で考え、行動ができるスタッフが求められているのです。そのために必要なものは、スタッフ一人一人の「自律」です。
まさにこれからのリーダーに期待される本当の役割は、「スタッフ一人一人が自律を目指すチーム作り」なのです。
それは例えば、リーダーからの「責任と権限の移譲」や「目標設定と実践に向けた取り組みと評価制度」であり、また職場内で、それぞれのスタッフの意見が尊重される風土作り、といった「職場環境づくり」です。
そのような職場作りのために必要な職場で必要な「具体的な行動」ついて研修では学び
ます。
研修の内容はこちらから
⇒https://www.hayashi-consul-sr.com/service2/menu2-2/