コラム

働き方改革法改正で何が変わるの?長時間労働是正 編

何がどう変わるのか、ご説明いたします。

法改正スケジュールを確認しましょう

※1 法人単位で常時使用する労働者数が100人超かつ資本金の額または出資金の総額が5,000万円超
※2 法人単位で常時使用する労働者数が100人以下または資本金の額または出資金の総額が5,000万円以下資本金または出資金がない場合は労働者数のみで判断します。
(医療機関の規模は病床数ではなく、労働者数等で判断します。)

大規模医療機関はすでに適用になっており、中小規模医療機関はこの4月には適用になります。

チェックしてみましょう

表を使ってチェックしてみましょう。

1つでも「NO」がある場合は注意が必要です。

Check① 年次有給休暇の年5日の時季指定が義務付けられます
※規模問わず全ての医療機関に適用

年次有給休暇が年10日以上付与される労働者に対して、自ら申し出て取得した日数や計画的付与で取得した日数を含めて、年5日取得させなければなりません。

Point1 自院の年次有給休暇の付与ルールを確認しましょう

職員ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、使用者(理事長、院長等)が取得時季を指定して与える必要があります。医療機関によって基準日は異なりますので、就業規則を確認するなど自院のルールを再度確認してみましょう。

Point2 年次有給休暇管理簿を作成する必要があります

年次有給休暇の基準日、与えた日数、取得・指定した時季を明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)の作成が義務付けられました。曖昧な管理体制になっている医療機関は管理方法を変えなければなりません。

Point3 年次有給休暇をとりやすい医療機関を目指しましょう

時季指定をするまでもなく、職員が年5日以上有給休暇を取得できるような職場づくりが大切です。休暇をとりやすいように業務内容を見直す、計画的付与を導入するなど対策を講じましょう。

Check② 労働時間の状況の把握が義務化

管理監督者(※)を含めるすべての労働者の労働時間の状況を、客観的な方法その他適切な方法で把握するよう義務づけられました。

Point1 産業医制度を活用しましょう

事業場単位で常時使用する労働者数が50 人以上の場合、産業医の選任義務があります。また理事長や院長等が、自身の病院の産業医になることはできません。

Point2 すべての職員の労働時間を把握できる体制を整えましょう

長時間労働(時間外労働が月80時間超)を行った職員がいる場合、産業医に情報提供するとともに、職員本人にも通知し、職員が申し出た場合は医師による面接指導を行わなければなりません。まずは、すべての職員の労働時間がきちんと把握・集計できる仕組みが整っているのか確認してみましょう。

(※)管理監督者とは
管理監督者に当てはまるかどうかは役職名ではなくその労働者の職務内容、勤務体系、待遇を踏まえて実態により判断します。

  • 経営者と一体的な立場で仕事をしている。
  • 出勤、退勤や勤務時間について厳格な制限を受けていない
  • その地位にふさわしい待遇がなされている。

上記に当てはまらない場合は管理監督者とはいえず、残業代を支給する対象となります。

Check③ 時間外労働の上限規制が定められます
※医師については2024 年4月に適用(施行内容を検討中)

◎時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
 ・年720時間以内(休日労働を含まない)
 ・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
 ・月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。
また、原則である月45時間を超えることができるのは、年6回までです。

Point1 36 協定をきちんと結びましょう

労働時間は原則1日8時間・1週40 時間以内とされており、これを超える場合は36 協定(時間外労働、休日労働に関する協定)の締結、労働基準監督署長への届出が必要です(月45 時間、年360時間を超える場合は特別条項付36 協定)。きちんと締結、届出をしているのか確認しましょう

Point2 時間外労働・休日労働を必要最小限に留める工夫をしましょう

36 協定の範囲内であっても、使用者(理事長、院長等)は職員に対する安全配慮義務を負います。また、労働時間が長くなるほど過労死との関連性が強まります。時間外労働がなるべく発生しないようにするため、変形労働時間制やワークシェアリング、時短勤務など柔軟な働き方の導入を検討しましょう。

Point3 休日労働をきちんと把握しましょう

「複数月平均80 時間」には休日労働を含みます。時間外労働45 時間を超過していなくても、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月それぞれの時間外労働+休日労働が80 時間を超えていないか注意が必要です。

 

その他の法改正項目

◆「勤務間インターバル」制度の導入が努力義務になりました
「勤務間インターバル」制度とは、1日の勤務終了後翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間を確保する仕組みであり、働く方々の十分な生活時間や睡眠時間を確保できる制度です。この制度を導入することにより、職員の十分な生活時間や睡眠時間を確保することができると期待されています。

◆中小規模の医療機関でも月60時間超え残業の割増賃金率が引上げられます2023 年4月より、月60 時間超の残業割増賃金率が50%に引き上げられます。

「働き方改革」は負担だらけ?
 - 答えはNO!やり方次第で大きなメリットが得られます

医師の健康に配慮した相談体制・就業措置により早期離職防止へ

課 題

医師の早期離職が相次いで発生。以前から給与計算を委託している社労士からも、残業代が増加傾向にあり、医師の長時間労働が常態化しているのではとの指摘があった。現状を把握すべく
医師に向けてアンケート調査を行ったところ「人員不足により休憩がとれない」「夜勤明けも引継ぎで帰れない」「疲れが原因のヒヤリ・ハットが心配」など職場の疲労の色が浮き彫りとなった。

対 策

職場環境を改善すべく、経営者は社労士と産業医に相談。産業医の相談窓口に加え、新たに働き方に関する相談先として社労士による相談窓口を設けた。また社労士は、メンタル不調を未然
に防止するために、産業医が必要と判断した際は「労働時間の短縮」や「深夜業の減少」等の措置を行うと就業規則に記載するよう提案し、病院側の体制について医師等に向けて説明会を行った。

結 果

長時間労働をなくしたいという病院側の姿勢が伝わり、離職希望者が減った。顧問社労士や産業医による相談窓口があることにより、安心して働くことができるとの声も多く寄せられるようになった。医師自身のモチベーションが上がり院内に活気が戻ったため、患者からの評判もよく、病院の評判も高まっている。

社労⼠は、「⼈を⼤切にする」働き⽅改⾰の専⾨家です。
働き方改革への第一歩として社労士をご活用ください!

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

医療事業所様向け情報(経営)1月号③

医療機関でみられる人事労務Q&A
『業務中の事故でケガをした場合どのように対応すればよいか』

Q:

さきほど、職員が業務中に階段から落ちてケガをするという事故が発生したという連絡がありました。本人の意識はありますが、頭を打っているかもしれないので、念のため検査のできる病院へ行くよう指示したところです。このように労災が発生した場合、医院としてどのような対応をすればよいでしょうか。

A:

業務中に事故が発生しケガをしたときに最優先すべきことは、被災した職員の救護・治療です。可能であれば、労災保険指定の医療機関等(以下「労災指定病院」という)を受診するよう指示をします。その後、労働基準監督署等への手続きを行うため、ケガをした状況や事実関係を把握しておくことが重要です。

詳細解説:

1.ケガをした職員への対応

業務中の事故により職員がケガをしたときには、ケガをした職員の状況確認と救護・治療が最優先になります。治療が必要になる場合は、可能であれば、労災指定病院へ行くことが望ましいです。労災の治療費等は、原則として労災保険から支払われます。労災指定病院の場合は、窓口等で「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5 号)」を提出し、労災であることを申し出ることで、治療費を直接負担する必要はありません。労災指定病院以外へ行く場合は、治療費の全額をいったん負担し、後日、労働基準監督署へ「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7 号)」を提出することにより請求します。いずれの場合であっても、健康保険は利用できないため、窓口等で健康保険証を提示しないよう注意を呼びかけましょう。

2.労働基準監督署への報告・手続き

こうしたケガにより、仕事を休まなくてはならない場合は、労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」の提出が必要になります。休業が4 日以上であれば様式第23 号、休業が4 日未満であれば様式第24 号となり、休業日数によって書類の種類と提出期限が異なります。この報告は、災害の発生状況等を記載するため、災害発生時の目撃者の有無や事実関係を確認しておきます。

なお、仕事を休んだ日に対し、休業4 日目から休業補償給付が支給されます。その他ケガの状態によっては障害や遺族に関する給付も行われますので、すみやかに給付が行われるよう労働基準監督署への届出を行うようにしましょう。

業務中の事故によるケガなどが発生すると、突然の事態にどのように対応すればよいか戸惑う場面があります。日頃から職員に対して報告体制を周知したり、近隣の労災指定病院をあらかじめ調べておくとよいでしょう。あわせて、事故の発生原因の究明や、改めて院内の安全衛生教育を行うことにより、再発防止策を立案・実行することが求められます。

(来月に続く)

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ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

介護事業所様向け情報(経営)1月号③

福祉施設でみられる人事労務Q&A
『業務中の事故でケガをした場合どのように対応すればよいか』

Q:

さきほど、職員が業務中に階段から落ちてケガをするという事故が発生したという連絡がありました。本人の意識はありますが、頭を打っているかもしれないので、念のため検査のできる病院へ行くよう指示したところです。このように労災が発生した場合、施設としてどのような対応をすればよいでしょうか。

A:

業務中に事故が発生しケガをしたときに最優先すべきことは、被災した職員の救護・治療です。可能であれば、労災保険指定の医療機関等(以下「労災指定病院」という)を受診するよう指示をします。その後、労働基準監督署等への手続きを行うため、ケガをした状況や事実関係を把握しておくことが重要です。

詳細解説:

1.ケガをした職員への対応

業務中の事故により職員がケガをしたときには、ケガをした職員の状況確認と救護・治療が最優先になります。治療が必要になる場合は、可能であれば、労災指定病院へ行くことが望ましいです。労災の治療費等は、原則として労災保険から支払われます。労災指定病院の場合は、窓口等で「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5 号)」を提出し、労災であることを申し出ることで、治療費を直接負担する必要はありません。労災指定病院以外へ行く場合は、治療費の全額をいったん負担し、後日、労働基準監督署へ「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7 号)」を提出することにより請求します。いずれの場合であっても、健康保険は利用できないため、窓口等で健康保険証を提示しないよう注意を呼びかけましょう。

2.労働基準監督署への報告・手続き

こうしたケガにより、仕事を休まなくてはならない場合は、労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」の提出が必要になります。休業が4 日以上であれば様式第23 号、休業が4 日未満であれば様式第24 号となり、休業日数によって書類の種類と提出期限が異なります。この報告は、災害の発生状況等を記載するため、災害発生時の目撃者の有無や事実関係を確認しておきます。

なお、仕事を休んだ日に対し、休業4 日目から休業補償給付が支給されます。その他ケガの状態によっては障害や遺族に関する給付も行われますので、すみやかに給付が行われるよう労働基準監督署への届出を行うようにしましょう。

業務中の事故によるケガなどが発生すると、突然の事態にどのように対応すればよいか戸惑う場面があります。日頃から職員に対して報告体制を周知したり、近隣の労災指定病院をあらかじめ調べておくとよいでしょう。あわせて、事故の発生原因の究明や、改めて施設内の安全衛生教育を行うことにより、再発防止策を立案・実行することが求められます。

(来月に続く)

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ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

介護事業所様向け情報(経営)1月号②

都道府県別にみる介護保険第1 号被保険者の現状

高齢化の進展により、65 歳以上の介護保険の第1 号被保険者(以下、1 号被保険者)数は増加しています。ここでは1 号被保険者数と要介護(要支援)認定者数を都道府県別にみていきます。

被保険者数は3,500 万人が目前に

2019 年8 月に厚生労働省が発表した報告書※によると、全国の1 号被保険者数は増加を続け、2017 年(平成29 年)度末で3,488 万人となりました。前年度から1.4%の増加です。また人口に占める割合は28%程度となっています。都道府県別の状況は下表のとおりですが、各地の人口の多い地域で100 万人を超えています。

1 号被保険者に占める要介護(要支援)認定者(以下、認定者)数は628 万人で、前年度より0.6%の減少となりました。

認定率は18.0%に

認定率(1 号被保険者に占める認定者の割合)は、全国計で18.0%でした。都道府県別では、和歌山県が21.8%で最も高くなりました。その他、大阪府や島根県、長崎県、愛媛県、岡山県、京都府で20%以上になっています。
最も低いのは埼玉県で、14.6%でした。

ここで紹介した都道府県以外にも、市町村別等のデータが発表されています。興味のある方は、自施設の所在地の状況を確認されてはいかがでしょうか。

※厚生労働省「平成29 年度介護保険事業状況報告(年報)」
介護保険事業の実施状況について、保険者(市町村等)からの報告数値を全国集計したものです。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/17/index.html

(次号に続く)

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

介護事業所様向け情報(経営)1月号①

来年度の介護人材確保対策の計画

今年度は10 月に処遇改善のための介護報酬改定が施行されました。来年度の取組計画は、令和2 年度の概算要求からも方向性を掴むことができます。厚生労働省の発表資料※から、現在検討されている主要項目をご紹介します。

介護分野への元気高齢者等参入事業

介護分野人材のすそ野を広げるべく、元気な高齢者の活躍を促進する取組です。既に実施されている研修等を更に深め、介護分野への関心を持ってもらうためのセミナーや、入門的な研修等への受講を誘導し、介護助手として介護施設にマッチングするまでを想定しています。

介護職員の悩み相談窓口設置事業

介護職員が職場の悩み等を相談できる窓口を都道府県に設置し、介護職員の離職を防止する取組です。心理カウンセラーや経験年数の長い介護福祉士を専門の相談員として配置し、来所や電話だけでなく、メールやSNS、施設への出張相談等、幅広い方法で受け付ける計画です。

若手介護職員交流推進事業

介護関係職種の離職の6 割超が勤続3 年未満の職員で、小規模事業所ほど離職者の勤続年数が短いという調査結果を受け、入職時や3 年目の節目のタイミングで、他施設の若手介護職員と交流できるネットワークを構築し、介護職の魅力等を再確認する取組が検討されています。

介護職チームケア実践力向上推進事業

多様な人材の参入促進や外部コンサルタントの活用によるリーダー職の育成等で、多様化・複雑化する介護ニーズに対応するチームケアを更に推進し、介護職員の不安払拭、定着促進と、利用者の自立支援、満足度向上を図る取組です。

介護のしごと魅力発信等事業の拡充

若年層や子育てを終えた層、アクティブシニアに対する介護の仕事の魅力発信等について、来年度は小中高生等の10 代、大学・専門学校生等の20 代前半、退職前や退職まもない時期のアクティブシニア層への訴求も目指します。

福祉人材センターのマッチング機能強化

都道府県福祉人材センターによる職業紹介や就職説明会等に加え、新たにブロック研修を開催し、マッチング機能強化を図ります。

(※)厚生労働省「令和2 年度概算要求について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000549672.pdf

(次号に続く)

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医療事業所様向け情報(経営)1月号②

就業看護師の現状

看護師不足が問題となっています。ここでは、2019 年9 月に発表された厚生労働省の調査結果※から、就業看護師の現状をみていきます。

就業看護師数の推移

上記調査結果から、就業看護師数の推移をまとめると、下グラフのとおりです。

2012 年に100 万人を超えた就業看護師数は、2018 年には121.9 万人になりました。内訳は男性が9.5 万人、女性は112.3 万人です。

年齢階級別の人数

40 代が最も多く、30 万人を超えています。次いで30 代が多く、30 代と40 代で全体の50%以上を占めています。

就業場所別の人数

2018 年の就業看護師数を就業場所別にみると、表2 のようになります。

病院が約86 万人、診療所が約16 万人となり、全体の80%以上を占めています。その他では介護保険施設等が約9 万人で、全体の7.3%を占めています。

就業看護師数は増加を続けていますが、現状はもちろん将来的な看護師不足が問題となっています。看護師不足に悩む個々の医療機関にとっては、現在就業していない看護師等が復職しやすい環境を作っていくことが、看護師不足を解消するためのひとつの方法となるのではないでしょうか。

※厚生労働省「平成30 年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
隔年調査で、就業医療関係者(免許を取得している者のうち就業している者)等について、就業地の都道府県知事に届出のあった数値等を取りまとめたものです。グラフはこの結果から作成したものです。グラフの数値は四捨五入の関係で実数と異なる表示となっている場合があります。詳細は次のURL のページからご確認ください。https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/

(次号に続く)

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医療事業所様向け情報(経営)1月号①

認定期限迫る! 検討・手続きは急務です

「持分あり医療法人」から「持分なし医療法人」への移行に際し、今ならば認定制度を利用することで、税制優遇措置や低利融資が受けられます。2019年11月末時点で、期限は 2020 年 9 月末まで。手続きされる方は急務です。

7 割強の「持分あり医療法人」

持分あり医療法人は、改正医療法施行により、2007 年4 月1 日以降設立することはできません。それまでに設立された持分あり医療法人は、“経過措置型医療法人”として当面存続が認められ、“持分なし”への自主的な移行が求められています。しかし、移行に係る課税上の問題やその他の事情により、2019 年3 月末日現在、未だに医療法人数の7 割強を占めています。

そこで国は移行を促進するための施策として、この課税上の問題が解決できる、「認定医療法人制度」を設けました。

課税上有利な「認定医療法人制度」

「認定医療法人制度」の“認定医療法人”とは、予め「持分なし医療法人」への移行計画の認定を受けた上で、移行を行う医療法人です。認定医療法人が、当該認定後、計画に従って3年以内に移行を果たし、出資持分を放棄すると、移行期間中の相続や贈与に係る税金や移行に伴う法人贈与税が結果的にかかりません。課税上大変有利な制度となっています。

準備を考えると、残った時間は後わずか

このように、課税上の問題で移行に足踏みをしている医療法人や出資者にとっては利点がある「認定医療法人制度」ですが、期限があります。認定は、現行では2020 年9 月30 日までとなっています。ゆとりを持って数ヶ月前に移行計画を厚生労働省に申請し、この日までに認定を受けなければなりません。

また、認定医療法人は、運営の適正性要件等、申請時までに一定の認定要件を満たさなければなりません。更にそれを移行後も6 年間維持することが求められます。直前期の決算内容によっては認定が受けられないこともあるため、事前対策にはある程度の時間を要します。検討なさる場合は、急ぎで取り組まれることをお勧めします。

なお、「認定医療法人制度」について、詳しくは、厚生労働省のパンフレット等をご参照ください。

(参考)厚生労働省パンフレット
「「持分なし医療法人」への移行促進策「延長・拡充」のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000180870.pdf

(次号に続く)

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ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

医療事業所様向け情報(労務)1月号④

男性も利用できる厚生年金保険の養育特例

従業員に子どもが生まれ、子どもを育てながら働くときには、育児短時間勤務制度を利用したり、時間外労働を減らしたりすることで、子どもを育てる前と比較し、従業員が受け取る給与額が減少することがあります。このようなときには将来の年金額に関する厚生年金保険の特例措置が適用できる場合があります。ここではその内容や要件等を確認しておきましょう。

1.特例措置である「養育特例」とは

子どもを養育することにより給与額が減少すると、将来の年金額の計算の基となる標準報酬月額が、子どもを養育する前より下がることがあります。このように標準報酬月額が下がることで、最終的に従業員が将来受け取る年金額が減少することにつながります。そこで、3歳未満の子どもを養育することに伴い標準報酬月額が下がった場合、より高い養育前の標準報酬月額を、養育期間における標準報酬月額とみなして年金額を計算する措置が設けられています。一般的には、これを「養育特例」と呼びます。

2.養育特例の手続き

養育特例は、従業員が会社を通じて申し出るものであり、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届」に「戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書」(以下、「戸籍謄本等」という)および「住民票の写し」(以下、「住民票」という)を添付して提出します。
「養育」とは同居し監護することを指し、戸籍謄本等により、従業員と子どもの身分関係および子どもの生年月日(3歳未満の期間)の確認、住民票により従業員と子どもが同居していることの確認が行われます。

3.養育特例が適用される事例

養育特例に該当する代表的な事例は、産前産後休業および育児休業を取得していた従業員が、育児休業の復帰に際し、育児短時間勤務制度を利用し、給与額が減少するというものです。
この事例では、育児休業等終了後の月額変更に該当し、標準報酬月額の改定にかかる届け出を提出する際に、養育特例にかかる届け出もあわせて提出することが一般的になっています。
ただし、養育特例の適用はこのような育児休業等終了後の月額変更に該当する場合のみでなく、また、従業員の性別に関係なく適用されます。
そのため、例えば男性の従業員が育児休業の取得や育児短時間勤務の利用はしないものの、3歳未満の子どもの養育のために時間外労働を減らした結果、定時決定において、養育前の標準報酬月額よりも低いものに決定された場合にも適用されます。

養育特例は、従業員からの申出を受けた会社が日本年金機構へ提出するものではありますが、制度の周知が十分ではないこともあり、申出を行っていないケースもあると思われます。従業員に子どもが生まれた際には、会社から制度の説明を行うことで、申出の漏れを防ぎたいものです。

(来月に続く)

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ヒューマンスキルコンサルティング
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保育事業所様向け情報(労務)1月号④

男性も利用できる厚生年金保険の養育特例

従業員に子どもが生まれ、子どもを育てながら働くときには、育児短時間勤務制度を利用したり、時間外労働を減らしたりすることで、子どもを育てる前と比較し、従業員が受け取る給与額が減少することがあります。このようなときには将来の年金額に関する厚生年金保険の特例措置が適用できる場合があります。ここではその内容や要件等を確認しておきましょう。

1.特例措置である「養育特例」とは

子どもを養育することにより給与額が減少すると、将来の年金額の計算の基となる標準報酬月額が、子どもを養育する前より下がることがあります。このように標準報酬月額が下がることで、最終的に従業員が将来受け取る年金額が減少することにつながります。そこで、3歳未満の子どもを養育することに伴い標準報酬月額が下がった場合、より高い養育前の標準報酬月額を、養育期間における標準報酬月額とみなして年金額を計算する措置が設けられています。一般的には、これを「養育特例」と呼びます。

2.養育特例の手続き

養育特例は、従業員が会社を通じて申し出るものであり、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届」に「戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書」(以下、「戸籍謄本等」という)および「住民票の写し」(以下、「住民票」という)を添付して提出します。
「養育」とは同居し監護することを指し、戸籍謄本等により、従業員と子どもの身分関係および子どもの生年月日(3歳未満の期間)の確認、住民票により従業員と子どもが同居していることの確認が行われます。

3.養育特例が適用される事例

養育特例に該当する代表的な事例は、産前産後休業および育児休業を取得していた従業員が、育児休業の復帰に際し、育児短時間勤務制度を利用し、給与額が減少するというものです。
この事例では、育児休業等終了後の月額変更に該当し、標準報酬月額の改定にかかる届け出を提出する際に、養育特例にかかる届け出もあわせて提出することが一般的になっています。
ただし、養育特例の適用はこのような育児休業等終了後の月額変更に該当する場合のみでなく、また、従業員の性別に関係なく適用されます。
そのため、例えば男性の従業員が育児休業の取得や育児短時間勤務の利用はしないものの、3歳未満の子どもの養育のために時間外労働を減らした結果、定時決定において、養育前の標準報酬月額よりも低いものに決定された場合にも適用されます。

養育特例は、従業員からの申出を受けた会社が日本年金機構へ提出するものではありますが、制度の周知が十分ではないこともあり、申出を行っていないケースもあると思われます。従業員に子どもが生まれた際には、会社から制度の説明を行うことで、申出の漏れを防ぎたいものです。

(来月に続く)

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介護事業所様向け情報(労務)1月号④

男性も利用できる厚生年金保険の養育特例

従業員に子どもが生まれ、子どもを育てながら働くときには、育児短時間勤務制度を利用したり、時間外労働を減らしたりすることで、子どもを育てる前と比較し、従業員が受け取る給与額が減少することがあります。このようなときには将来の年金額に関する厚生年金保険の特例措置が適用できる場合があります。ここではその内容や要件等を確認しておきましょう。

1.特例措置である「養育特例」とは

子どもを養育することにより給与額が減少すると、将来の年金額の計算の基となる標準報酬月額が、子どもを養育する前より下がることがあります。このように標準報酬月額が下がることで、最終的に従業員が将来受け取る年金額が減少することにつながります。そこで、3歳未満の子どもを養育することに伴い標準報酬月額が下がった場合、より高い養育前の標準報酬月額を、養育期間における標準報酬月額とみなして年金額を計算する措置が設けられています。一般的には、これを「養育特例」と呼びます。

2.養育特例の手続き

養育特例は、従業員が会社を通じて申し出るものであり、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届」に「戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書」(以下、「戸籍謄本等」という)および「住民票の写し」(以下、「住民票」という)を添付して提出します。
「養育」とは同居し監護することを指し、戸籍謄本等により、従業員と子どもの身分関係および子どもの生年月日(3歳未満の期間)の確認、住民票により従業員と子どもが同居していることの確認が行われます。

3.養育特例が適用される事例

養育特例に該当する代表的な事例は、産前産後休業および育児休業を取得していた従業員が、育児休業の復帰に際し、育児短時間勤務制度を利用し、給与額が減少するというものです。
この事例では、育児休業等終了後の月額変更に該当し、標準報酬月額の改定にかかる届け出を提出する際に、養育特例にかかる届け出もあわせて提出することが一般的になっています。
ただし、養育特例の適用はこのような育児休業等終了後の月額変更に該当する場合のみでなく、また、従業員の性別に関係なく適用されます。
そのため、例えば男性の従業員が育児休業の取得や育児短時間勤務の利用はしないものの、3歳未満の子どもの養育のために時間外労働を減らした結果、定時決定において、養育前の標準報酬月額よりも低いものに決定された場合にも適用されます。

養育特例は、従業員からの申出を受けた会社が日本年金機構へ提出するものではありますが、制度の周知が十分ではないこともあり、申出を行っていないケースもあると思われます。従業員に子どもが生まれた際には、会社から制度の説明を行うことで、申出の漏れを防ぎたいものです。

(来月に続く)

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