医療
育児休業中に一時的に勤務した場合の育児休業給付金の取扱い
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:現在、経理部門が決算業務で、とても忙しくしています。経理部門の従業員が昨年
12月から育児休業を取っているので、短期間でもいいので一時的に出勤してもらお
うと考えています。特に問題はないのですよね?
社労士 :繁忙期を乗り切るための一つの対策ですね。育児休業中のご本人はどのように考え
ているのでしょうか。
総務部長:育児にも慣れてきて、短時間の勤務であれば問題ないとのことでした。ただし、雇
用保険の育児休業給付金がもらえなくなってしまうのではないかと心配しています。
社労士 :確かに支給単位期間(※)に10日を超えて働き、かつ、80時間を超えて働いている
ときは、育児休業給付金が支給されなくなるというルールがあります。
総務部長:ということは、引続き育児休業給付金が支給されるようにするためには、この基準
を下回るような出勤日数や出勤時間にする必要があるということですね。
社労士 :育児休業給付金の受給ができるかという観点では、おっしゃるとおりです。もう一
つは、勤務したときに支給される給与の額が関係してきます。
総務部長:一時的に出勤してもらうので、給与については休む前の月給を時給換算し、その時
給額に勤務した時間数を掛けた額を支払う予定です。
社労士 :承知しました。育児休業給付金は、支給単位期間に、育児休業を開始したときに算
出する賃金月額の13%を超える給与が支給されると調整の対象となり、80%以上の
給与が支給されると支給されなくなります。
総務部長:休業している従業員が、休業する前にどの程度の給与の額をもらっていたかという
ことが関係してくるのですね。今のところ、決算が終わるまでの2ヶ月弱の間、週2
~3回で1日当たり4時間程度の勤務を考えていましたが、育児休業給付金の支給額と
の調整も含めて、どの程度、働いてもらうかを考えることにします。ありがとうご
ざいました。
※育児休業を開始した日から1ヶ月ごとの期間(育児休業終了日を含む場合は、その育児休
業終了日までの期間)。
【ワンポイントアドバイス】
1. 会社の業務の繁忙等のため、育児休業中の従業員について、休業者本人の同意を得て一時的に労務の提供を受けることは可能である。
2. 育児休業中に、一定の出勤日数・出勤時間を超えて働くと育児休業給付金は支給されなくなる。
3. 育児休業中に一定額以上の給与が支給されたときは、育児休業給付金の一部が減額されたり、支給されなくなったりする。
(次号に続く)
年次有給休暇の時季指定に関する実務上の注意点
4月より年10日以上の年次有給休暇(以下、「年休」という)が付与される従業員に対し、年休日数のうち少なくとも5日を取得させることが義務となりました。確実な取得に向けて、使用者(会社)が取得時季を指定して運用するケースもあることから、今回は、この使用者による時季指定に関する実務上の注意点をとり上げます。
1.就業規則の記載
今回の法改正では、従業員自らが年休を取得するなどして、5日の年休を取得すれば、改めて時季指定を行う必要はありません。しかし、取得日数が5日に満たない場合には、最終的には使用者が時季指定を行うことにより、確実に5日の年休を取得させる必要があります。
そもそも使用者による時季指定とは、会社が従業員の希望を聞いた上で、年休を取得する日をあらかじめ決めることをいいますが、これを行う際には、就業規則に時季指定を行う旨の規定が必要とされています。必ず記載しなければならない項目は、時季指定の対象となる労働者の範囲、時季指定の方法等です。
2.指定日までに退職した場合の対応
時季指定をしたものの、その指定した日までに従業員が退職するというケースが考えられます。このような場合には、従業員の希望を再度聞いた上で、退職日までに5日の年休を取得させることが原則的な取扱いになります。現実的には退職日までの期間が短いケースもありますが、このような場合も同様の取扱いとなります。
なお、実際に突然の退職により5日の年休を取得させることができなかったときは、労働基準監督署から個別の事情を踏まえた上で、会社に対して助言等が行われることになっています。
3.望ましくないとされる取扱い
この年休取得義務化の取扱いに関し、厚生労働省のリーフレット「年次有給休暇の時季指定を正しく取扱いましょう」において、以下のような取扱いは望ましくないとされています。
①法定休⽇ではない所定休⽇を労働⽇に変更し、その労働⽇について、使⽤者が年休として時季指定すること。
②会社が独自に設けている有給の特別休暇を労働⽇に変更し、その労働⽇について、使⽤者が年休として時季指定すること。
①は、実質的に年休の取得につながっていないことから、望ましくないとされています。
②は、今回の法改正をきっかけに特別休暇を廃止し、年休に振り替えることは、法改正の趣旨に沿わないとされています。特別休暇などの労働条件の変更は、従業員と会社が合意して行うことが原則になります。
年休の取得単位としては1日、半日、時間単位がありますが、この時季指定を行う際、従業員の意見を聴いた際に半日単位の年休の取得の希望があった場合、半日単位で行うことは差し支えないとされています。時間単位については時季指定を行うことはできず、また取得義務対象の5日の年休のカウントにも入れることはできないことから、誤った取扱いをしないようにしましょう。
(次号に続く)
今国会で成立した人事労務に関連する改正法のポイント
2019年1月28日から開会されている通常国会も、まもなく会期が終了となります。今国会は働き方改革関連法のような大きな法案は提出されていないものの、実務で影響のある内容がいくつか成立しています。そこで今国会で成立した改正法のうち、人事労務管理に関連するものの概要を確認しておきましょう。
1.女性活躍の推進
2016年4月に女性活躍推進法が施行され、301人以上の従業員を雇用する事業主には、女性活躍推進法にかかる一般事業主行動計画を策定することなどが義務付けられました。今回の法改正により、義務となる事業主の範囲が、101人以上の事業主に拡大します。また、情報公表の強化のため、公表すべき項目が増えることになりました。
2.パワハラ防止対策の法制化
セクシュアルハラスメントと妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント(以下、「セクハラ等」という)は、既に法制化され、防止対策を取ることが事業主の義務となっています。今回、労働施策総合推進法が改正され、事業主に対して、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務が新設され、セクハラ等と同様に相談体制の整備等が求められることになりました。
3.健康保険の被扶養者の範囲変更
配偶者や父母を始めとした直系尊属等の一定の家族は、健康保険の被保険者と別居していても、その他の要件を満たせば被扶養者となることができます。そのため、国外に住む家族も被扶養者となることができました。これについて、医療費の抑制や不正受給の
防止の観点から、一定の例外を設けつつ、原則として、国内に居住していること等の要件が追加されました。
4.マイナンバーカードの取扱いの変更
①マイナンバーカードの健康保険証利用
現在、健康保険証とマイナンバーカードは別のカードとなっています。今回、健康保険法等が改正されたことにより、マイナンバーカードに健康保険の被保険者や被扶養者の資格に関する情報を記録させることができるようになりました。これにより、医療機関で診察を受けるとき等に、マイナンバーカードを提示し、医療機関等がオンラインで被保険者や被扶養者の資格を確認できることになります。
②マイナンバー通知カードの廃止
これまでマイナンバーは、マイナンバー通知カードにより通知され、マイナンバー通知カードとその他の証明書類を用いることで、マイナンバーの証明書として利用することができました。今後は、マイナンバーカードを普及させる目的等から、マイナンバー通知カードが廃止され、マイナンバーカードへの移行促進が行われます。
今のところ(2019年6月10日現在)、いずれの内容も国会で改正法が成立し、公布されたところであり、具体的な施行期日を含め、その詳細は明確になっていません。今後、政省令や指針が定められ、具体的に実務として対応が必要となる項目が出てきます。まずは概要としてこれらの内容を確認しましょう。
(次号に続く)
医療機関でみられる人事労務Q&A
『飲み会でのセクハラは業務外でも対応の必要があるか』
Q:
ある職員から、先日開催した医院の親睦を図るための飲み会で、同僚からセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)被害を受けたという相談がありました。このようなセクハラの問題にも、医院として対応が必要でしょうか。また、どのような対応が必要となるのでしょうか。
A:
「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(以下、「指針」という。)(平成28 年8 月2 日 厚生労働省告示第314 号)には、セクハラが問題とされる職場は必ずしも通常業務を行う場所だけではないことが示されています。また、裁判例では当事者だけではなく事業主に対して損害賠償命令がされるケースもあるため、医院として対応することは不可欠と考えられます。
詳細解説:
国は、男女雇用機会均等法等によって職員が性的な言動により不利益を受けたり、就業環境が害されることを禁止しており、さらに指針において事業主が行うべき具体的な措置を示しています。
1. 職場以外でも対応が必要か
この指針において「職場」とは、職員が業務を遂行する場所としつつ、業務を遂行している場所であれば通常業務をしている場所以外、例えば打合せをするための飲食店、患者の自宅も職場に含まれるとしています。裁判例の大半が業務をしていない飲み会についても職場として判断しているため、職場として取り扱うことが現実的です。また、セクハラが起きてしまうと職員間の関係を悪化させ、業務に支障をきたしてしまうことは想像に難くないことからも、職場内で起きたセクハラ事案と同様の対応が求められると考えられます。
2. セクハラ問題が起きた際の対応方法
職員から被害の相談があったにも関わらず医院が適切な対応を行わないと、職場環境配慮義務違反として損害賠償が求められる可能性があります。それを防ぐためにはまず、被害を受けた職員からその内容や状況を聞く必要があります。被害を受けた職員への状況確認の後には、加害者の職員にも事情を聞くようにします。また、その場を目撃した他の職員がいれば、状況をヒアリングすることも考えられます。
事実確認が済んだら、必要に応じて加害者の職員に懲戒処分を行うことを検討することとなります。
セクハラ問題は当事者同士の問題と考えられがちですが、医院が損害賠償を迫られたり、都道府県労働局の専門部署から是正指導を受けることがあります。セクハラが起きないよう、医院全体で日頃の言動から注意するように心がけるとともに、いざ問題が発生してしまった場合に速やかに適切な対応ができるようにしておきましょう。
(来月に続く)
診療科目別の一般診療所数の増減
厚生労働省の発表によると、全国の一般診療所数は10 万施設を超えて推移しています。では診療科目別ではどうでしょうか。ここでは昨年12 月に発表された調査結果※から診療科目別の一般診療所の数などをみていきます。
1 万施設を超える診療科目は8 つ
上記調査結果から、2017 年と2008 年の診療科目別の一般診療所数をまとめると、下表のとおりです。
2017 年の施設数では内科が63,994 施設で最も多く、施設数全体に占める割合は63.1%となっています。次いで小児科が19,647 施設、消化器内科(胃腸内科)が18,256 施設になりました。また、外科、循環器内科、整形外科、皮膚科、リハビリテーション科も1 万施設を超えています。
10 年間の増減は
次に2008 年と2017 年の間の増減をみると、下表の一般診療所を除く39 診療科目のうち、増加が20、減少が19 となりました。
増加の中でも増減率が100%以上となったのが、腎臓内科、乳腺外科、病理診断科、糖尿病内科(代謝内科)の4 つでした。減少では、気管食道外科、放射線科、感染症内科、消化器外科(胃腸外科)が20%以上の減少となりました。
貴院の診療科目の状況はいかがでしょうか。
※厚生労働省「平成29 年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」
全国の医療施設を対象にした調査です。ここで紹介した数値は、重複計上されていますので、診療科目別の一般診療所数を合計しても一般診療所数とは合致しません。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/17/
(次号に続く)
外国人旅行者への医療提供の課題
国が目指す観光立国、来年の東京オリンピック・パラリンピック、2025 年の大阪万博と、外国人旅行者の増加が予想されますが、医療現場ではその受入れが課題です。今回は厚生労働省の調査結果※1 より、費用請求の実態に注目します。
1 点あたりいくらを請求するか
自由診療である外国人旅行者の診療価格設定は悩ましい問題。調査では「訪日外国人旅行客の医療費をどう設定しているか」の問いに対し、90%が「1 点あたり10 円」と回答しました。
外国人患者受入れの多い病院(観光庁訪日外国人旅行者受入医療機関等)では、「1 点あたり10 円」との回答は61%に留まり、27%が「1 点あたり20 円以上」で請求しています。
外国人旅行者の受入れには、言語対応や文化・風習への配慮等にも費用と時間を要します。しかし同調査によると、通訳料を別途請求している病院はわずか1%にすぎず、大半の病院において通訳料を請求していません。医療通訳の費用は自由診療だけでなく、社会保険診療においても請求可能です。
また、外国人旅行者の診療に伴い発生する旅行者保険に関する事務費用や、診療・治療に必要な患者情報について、外国と連絡を取る際に生じる事務費用についても、患者へ請求をすることができます。
今回の調査結果を受け、厚生労働省は通知※2を発し、この件の周知に取組んでいます。
18.9%が未収を経験
回収についても課題が浮き彫りとなりました。昨年10 月の1 ヶ月間に外国人患者を受け入れた病院のうち、18.9%が外国人患者による未収を経験しています。
病院あたりの未収金の発生は平均8.5 件、総額の平均は42.3 万円ですが、中には総額が100万円を超す病院もみられました。
(※1)厚生労働省「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果(概要版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000173230_00001.html
(※2)厚生労働省「社会医療法人等における訪日外国人診療に際しての経費の請求について(通知)医政総発0328 第1 号」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000497174.pdf
(次号に続く)
働き方改革の一環として注目すべきフレックスタイム制
4月に施行された働き方改革関連法のうち、フレックスタイム制は導入が進んでいませんが、比較的大きな効果が見込まれることから、その改正のポイントと総労働時間に関する例外について確認しておきます。
1.フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、あらかじめ定められた総労働時間の中で、従業員が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めて働くことができる制度です。通常の労働時間制度であれば、始業が午前9時、終業が午後6時(途中1時間の休憩)の1日8時間労働というように、始業および終業時刻が固定的に決定されていますが、フレックスタイム制の場合、忙しい日については午前8時から午後8時まで11時間勤務し、比較的余裕がある日には午前11時から午後5時まで5時間勤務とすることなどにより、従業員が柔軟な働き方をすることができます。
2.清算期間を3ヶ月に延長
今回の大きな変更が清算期間の延長です。これまでフレックスタイム制は清算期間の上限が1ヶ月とされていましたが、これが3ヶ月に延長され、より柔軟に労働時間を調整することが可能になりました。例えば7月が繁忙期で9月が閑散期の場合、7月は法定労働時間の総枠を超えて働く一方、9月は7月の法定労働時間の総枠を超えた分だけ減らして働くことができます。ただし、時間外労働となる割増賃金の取扱いは複雑なため、厚生労働省のリーフレットなどを参考にあらかじめシミュレーションしておくことが求められます。
3.新設された完全週休2日制の例外
これまで完全週休2日制であっても、曜日の巡りによって、清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠を超えてしまい、総労働時間のみの勤務であっても、時間外労働が発生することがありました。
例えば清算期間の暦の日数が30日の月で所定労働時間が8時間、所定労働日数が22日(完全週休2日で当月8日の所定休日)であった場合、総労働時間は176時間となりますが、法定労働時間の総枠は171.4時間であり、4.6時間については時間外労働として割増賃金を支払う必要がありました。
この取扱いが改正され、週の所定労働日数が5日(完全週休2日制)の従業員を対象に、労使協定を締結することで、法定労働時間の総枠を清算期間内の所定労働日数に8時間を乗じた時間数を労働時間の限度とすることが可能となりました。これにより、上記の例では、所定労働時間を176時間とし、その時間を勤務したとしても、時間外労働は発生せず割増賃金の支払いも不要となります。
フレックスタイム制の活用は、育児や介護、病気の治療等と仕事との両立だけでなく、従業員のより効率的な働き方のひとつとして考えることができます。フレックスタイム制など、柔軟な労働時間制度の導入に関するご相談などがございましたら、当事務所までお問い合わせください。
(来月に続く)
社会保険の添付書類の廃止や署名・押印の省略の動き
現在、行政手続きのコスト削減のための様々な取組みが進められています。資本金1億円超等のいわゆる大企業では、2020年4月1日以後に開始する事業年度から電子申請が義務化されるなど、電子化による効率化、生産性の向上は注目のポイントとなっています。一方、電子化以外にも手続き自体の省略や、添付書類の省略が認められるようになっていることから、ここではそうした動きについて確認しておきましょう。
1.添付書類の廃止
社会保険の手続きでは添付書類が求められるものがありますが、今回、以下に該当する手続きについて添付書類が廃止されることとなりました。
①資格喪失届および被保険者報酬月額変更届
の届出の受付年月日より60日以上遡る場合
②既に届出済である標準報酬月額を大幅に引き下げる場合
なお、添付書類の廃止に伴い、事業所が適正な届出処理を行っているかを確認するため、年金事務所が適用事業所の調査を重点的に行うことにしています。添付書類を用意すること自体は不要ですが、該当するような手続きの場合には、必ず確認の記録を残しておきましょう。
2.署名・押印等の省略
社会保険の届出は、事業主が提出者となるものと、被保険者等の申請者が事業主を通じて提出するものがあり、後者については申請者の署名または押印が必要になります。
次の届出の署名または押印は、事業主が申請者本人が届出を提出する意思を確認し、各届書の備考欄に「届出意思確認済み」と記載することにより、省略することができるようになりました。
①被保険者生年月日訂正届
②被扶養者(異動)届・第3号被保険者関係届
③年金手帳再交付申請書
④養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(申出の場合)
⑤養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(終了の場合)
なお、電子申請および電子媒体による申請では、署名または押印ではなく委任状を添付することになっていますが、この委任状が省略できることになりました。
3.適用開始時期と留意点
1および2の内容は2019年3月29日に、厚生労働省から日本年金機構へ通達されています。
通達の内容を確認すると、通達された日から適用されるように判断できますが、一方で2019年9月1日までは従前の例によることができるという記載もあり、年金事務所や事務センターによっては当面の間、添付書類や署名・押印が求められることもあるようです。
実務上は、管轄の年金事務所や事務センターに省略が認められるかを必ず確認の上、手続きを行うようにしましょう。
現状、届出書に被保険者等の署名または押印をもらうために、事業主と従業員の間で書類のやり取りが行われ、手続きが煩雑になったり、手続きに時間を要することになっています。
2のような取扱いにより、自社での書類の流れを整理し、業務効率化を目指したいものです。
(次号に続く)
年次有給休暇と子の看護休暇の違いの整理
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社会保険労務士とその顧問先の 総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:4歳の子どもを育てる従業員から、子どもが体調不良で病院に連れて行きたいので、
子の看護休暇を取りたいという申し出がありました。当社の子の看護休暇は無給の
ため、年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得を勧めようと思いますが、問
題ありませんか。
社労士 :年休と子の看護休暇の内容について整理をしておきましょう。年休は入社してから
6ヶ月経過し、その期間の全労働日の8割以上を出勤した場合に付与される有給の休
暇のことです。ストレス解消やリフレッシュの目的で付与される休暇ですが、取得
目的は特に問われません。
総務部長:当社でも取得目的は様々で、旅行や銀行・役所に行く必要のある用事、自分の体調
不良等があります。
社労士 :そうですね。一方、子の看護休暇は小学校に入学する前の子どもを育てている従業
員が、子どもが病気になったりケガをしたりしたときに、看護のために取得できる
休暇です。取得目的には子どもに予防接種や健康診断を受けさせることも含まれて
いますが、これらの内容に限られています。なお、取得した日については無給でも
構いません。
総務部長:そうですね。確か取得できる日数は、対象となる子どもが1人のときは1年に5日、2
人以上のときは年に10日でしたよね。
社労士 :はい、その通りです。他にも細かな違いがありますが、年休は取得目的が問われな
いのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定される点が従業員にとっては大きな違
いになります。例えば、子の看護休暇は今回のように子どもが体調不良のときに取
得できますが、自分が体調不良のときには取得できません。
総務部長:そうか、なるほど!申し出をしてきた従業員は、確かに年休があと1日しか残ってい
ないと言っていました。
社労士 :そうでしたか。もしかしたら年休は、子どもの体調不良以外の理由で休みを取得し
たいときに残しておきたいと考えているのかも知れませんね。
総務部長:そうですね。良かれと思って年休の取得を勧めようと考えていましたが、従業員な
りに考えて申し出たことだと思いますので、このまま子の看護休暇で処理します。
社労士 :それが良いでしょう。ちなみに、子の看護休暇は無給で構いませんが、欠勤とは違
い従業員の権利として取得できます。また、取得したことで会社が不利益な取扱い
をすることは禁じられていますので、賞与の査定で勤務成績をマイナス評価にする
ようなことがないようにご注意ください。
総務部長:無給であると欠勤と変わらないと思われがちですが、大きな違いがありますね。あ
りがとうございました。
【ワンポイントアドバイス】
1. 年休は取得目的が制限されないのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定的である。
2. 年休は有給の休暇であるが、子の看護休暇は無給でも構わない。
3. 子の看護休暇を取得したことに対し、不利益な取扱いをしてはならない。
(次号に続く)
働き方改革に取り組む中小企業が人材を確保する際に活用できる助成金
新年度となり、さまざまな助成金制度が新設・変更されていますが、中小企業対象の注目の助成金として、「人材確保等助成金(働き方改革支援
コース)」が新設されました。これは人材の雇入れに対する助成金制度で、活用する場面も比較的多いと思われますので、以下ではこの制度の概要をとり上げましょう。
1.助成金の概要
この助成金は、働き方改革を進める上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新しく労働者を雇入れ、人材の配置の変更、労働者の負担軽減に取り組む場合に助成されるものです。
助成金の対象となる事業主は時間外労働等改善助成金の支給を受けた中小企業です。具体的には平成29年度であれば旧職場意識改善助成金の指定されたコース、平成30年度以降であれば時間外労働等改善助成金の指定されたコースの支給を受けていることが必要です。
なお、平成31年度以降に指定されたコースの支給を受けた事業主も対象になります。
2.助成額
助成金を受給するためには、労働者を初めて雇入れる予定日の属する月の初日の6ヶ月前の日から1ヶ月前の日の前日までに、雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。
その後、認定された雇用管理改善計画に基づき、新たな労働者を雇入れた上で、雇用管理改善を実施し、1年間取り組んだ後に申請することで、各種要件を満たした場合に「計画達成助成」、計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たした場合に「目標達成助成」が支給されます。支給額は以下のとおりです。
[計画達成助成]
雇入れた労働者1人当たり60万円
短時間労働者※1人当たり40万円
支給対象となる労働者は10人を上限とし、
雇用管理改善計画認定通知書に記載された認
定金額を上限に支給されます。
[目標達成助成]
労働者1人当たり15万円
短時間労働者※1人当たり10万円
ただし、支給の算定人数の上限があります。
※週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者
3.活用にあたっての注意点
新たに労働者を雇入れても、計画開始前後の労働者数を比較し、人員増とならない場合には助成金が支給されないなど、細かな要件が設けられています。そのため、活用を検討している場合は、事前に要件を確認しておきましょう。
この助成金を受給するための前提となる時間外労働等改善助成金の指定されたコースには、時間外労働上限設定、勤務間インターバル導入、職場意識改善の3つがあります。働きやすい環境づくりに向けて、労務管理担当者に対する研修、タイムカードなどの労務管理用機器や労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新などの取組みを予定している企業については、時間外労働等改善助成金への取組みをした上で、更に人材確保が必要なときには本助成金の活用を検討することになります。
(次号へ続く)







