医療事業所様向け情報(経営)4月号③

医療機関でみられる人事労務Q&A
『健康保険の扶養となることの可否を判別するための収入額の基準』

Q:

職員から、勤務先を退職した子どもを扶養にしたい、という連絡がありました。
その子どもは正社員として勤務していたため、今年は既に130 万円以上の収入があり、さらに雇用
保険から失業給付(基本手当)を受ける予定とのことです。扶養にすることができるのでしょうか。

A:

健康保険の扶養(被扶養者)は、扶養される者の生計を職員本人が維持していることが必要であり、
扶養される者の収入や親族の範囲、同居の有無、別居の場合は仕送り額などによって可否を判別しま
す。このうち、収入は、今後1 年間の収入が130 万円(60 歳以上または一定の障がい者の場合は180
万円)未満であり、この収入には失業給付等も含まれます。

詳細解説:

1.収入の計算期間

税務上の扶養は、1 月から12 月の期間の収入が通常103 万円以下であるか否かによって判別され
る(厳密には所得)のに対し、協会けんぽ等の健康保険の扶養は、今後1 年間の収入見込み額が
130 万円未満であるか否かで判別します(昭和52 年4 月6 日保発第9 号・庁保発第9 号)。

例えば扶養される者が10 月末日まで勤務し、その暦年中の給与収入が250 万円であっ
た場合、税務上は既にその年の収入が103 万円を超えているため、当年中は税務上の扶養
とすることができません。それに対し、健康保険は今後1 年間の収入見込み額で判別する
ことから、退職後の11 月は収入がなく、その後1 年間の収入見込みがないのであれば、退
職日の翌日から扶養にすることができます。
また仮にアルバイト等で勤務を再開した場合には、130 万円を12 ヶ月で除した金額である
月額108,333 円以下であれば継続して扶養にすることができます。

2.収入見込み額の種類

扶養となることの可否を判別する際の収入見込み額は、給与収入のみであることが大多
数ですが、この給与収入は残業手当や通勤手当も含めた総支給額で確認をします。税務上
での判別は、扶養される者が退職後に受け取る失業給付や出産手当金などの非課税となる
給付は除いて判別するものの、健康保険での判別はこれらも収入として考えます。そのた
め、給付を受けている場合であっても、130 万円を360 日(30 日×12 ヶ月)で除した金額で
ある日額3,611 円以下であれば扶養にすることができます。なお、失業給付は通常、退職
してから給付制限期間であるおよそ3 ヶ月間は受給できないことから、給付制限期間中で
あれば収入見込み額は0 円となり、健康保険の扶養にすることができます。

扶養は、税務上と健康保険上の異なる基準があるため、誤った手続となることがありま
す。扶養の手続を行う際は、具体的な給与収入額のほか、失業給付などの受給の有無を確
認し、確実に行いましょう。

(来月に続く)

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