「自立支援に資する介護とは」(介護給付費分化会から)

自立支援に資する介護 
 
~介護給付費分科会~


 自立支援に資する介護を行っている事業者への

インセンティブ付与の検討が求められているが、

「自立」には▼心身機能・身体構造▼活動・参加—の

両面からのアプロ―チが必要で、「要介護度の改善」のみ

を指標としたインセンティブ付与などは好ましくない—。

 23日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、

委員の意見はこうした点で概ね一致しています。

もっとも、2018年度の次期介護報酬改定において

「自立支援に資する介護」をどのように評価するのか、

具体化にはまだまだ議論が必要な状況です。

ここがポイント!
1 「要介護度改善=自立支援に資する」との短絡的な考え
  には与しない
2 「自立支援に資する」かどうかの判断を、どういった指標
  で行うべきか
3 一部自治体では「要介護度改善」に奨励金を支給

4 自立支援に向けて、事業者・利用者双方の意識改革も重要課題


介護保険では「自立支援」を理念の1つに置いています。

この点に関連して、今年(2017年)6月に閣議決定された
未来投資戦略2017では「次期介護報酬改定(2018年度改定)で
、効果のある自立支援について評価を行う」方針が示され、
骨太方針2017(経済財政運営と改革の基本方針2017)でも
「自立支援に向けた介護サービス事業者に対する
インセンティブ付与のための『アウトカム等に応じた
介護報酬のメリハリ付け』を検討し、2018年度介護報酬改定で
対応する」こととされました。

では、骨太方針2017などで指示されている「介護報酬への

反映」などに向けて、どのような仕組みを考えていくべきで
しょうか。

仕組みの構築に向けては、(1)評価指標をどう考えるか(どういった指標で『自立に資する介護サービス』と判断するのか)(2)インセンティブは介護報酬で付与すべきか、他の仕組みを考慮すべきか—と、大きく分けて2つの論点があります。


まず(1)については、厚労省や委員の見解を踏まえ、「
身体機能だけでなく、「社会参加」や「活動」、さらには「利用者・入所者のQOL」をも加味するとなると、評価は相当
難しくなります。
 
この点について齋藤訓子委員(日本看護協会副会長)らは

「排泄の自立や、褥瘡の状況などについて、入所時・サービス時

からどれだけ改善したか、などのアウトカムに着目すべき」と

具体的に提案。また前述のようにクリームスキミングの発生

を防止するために、アウトカムだけでなく「プロセス」

(どういった介護を行ったのか)と「ストラクチャー」

(どういった体制を構築しているのか)をも加味した総合的な

評価を行うべきとの意見も出されています。

このように評価指標が設定されたうえで、自立支援に

資するサービスを行っている事業所について「介護報酬で

評価を行うのか」、あるいは「介護報酬以外で評価を行うのか」

というのが(2)の論点です。

前者であれば、「加算の新設」「基本報酬での評価」などが

考えられ、後者であれば、例えば自治体が独自に行っている

補助(例えば東京都品川区では、要介護度が改善した場合

、介護報酬の軽減を補填するために、1段階改善当たり2万円

の奨励金を支給)の全国展開などが考えられます。

介護給付費分科会には後者を選択する権能はありませんが、

鈴木委員や瀬戸委員らは後者の「自治体事業」が好ましいと

の見解を示しています。

なお、こうした議論をする際に、「現在の介護報酬体系では、

要介護度が改善すれば報酬(つまり事業所の収入)が

低くなりディスインセンティブが生じている」と指摘される

ことがあります。
この点について武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は


検査・投薬などが必要で診療報酬が高い(収入が多い)が、

徐々に回復し診療報酬は減っていく(収入も減る)。

しかし、こうした時に『収入が減るので困るな』という医師

はいない。介護でも同様に考えるべきではないか」とコメント

しています。例えば要介護度に着目すれば、改善は

「事業者にとっても、利用者にとっても喜ばしい」ことの

はずですが、事業者は「報酬が減ってしまう」、

在宅の利用者は「区部支給限度基準額が下がってしまう」と

逆に考えることを武久委員は従前から問題視しており、

事業者・利用者双方の「意識の改善」も重要なテーマと

なりそうです。

今後の動きに注目です。


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