保育士「資格登録のみ」100万人超 困難な時短勤務、規制緩和空回りに(日経新聞記事より)
保育士の資格があるのに保育所などで働かない「潜在保育士」が資格者の6割に達することが分かった。看護師など他の資格と比べ突出して多い。短時間勤務が難しく、政府の規制緩和が現場のニーズと合わずに空回りする地域もある。賃金の低さも一因で、独自に待遇を改善する自治体が出てきた。少子化対策の充実に向け、すでに資格を持つ人材の掘り起こしが欠かせない。
厚生労働省によると、保育士の資格を持つ登録者数は最新データの2020年時点で167万3000人だった。このうち実際には保育士として働いていない人が102万8000人に達した。
保育士が国家資格となってすぐの05年に比べ2.8倍に増え、登録者全体の61%となった。05年時点では登録者の5割程度だった。
21年以降も大きな変化はないようだ。東京都では22年3月時点の保育士の登録者数は16万3401人で、このうち実際に保育士として働く人は他県の勤務などを含めても半数ほどとみられる。
社会保障の他の分野に比べ、資格を持つのに従事していない潜在人材の割合が高い。看護師では約3割、介護福祉士では約2割にとどまる。
保育の現場は人手不足に悩み、22年10月の保育士の有効求人倍率は2.49倍と全職種平均の1.35倍を大きく上回った。東京都の担当者は「働く時間の長さや仕事の多さ、人間関係を理由に保育士をやめている人は多いようだ」と話す。
保育士は園児が登園する前に開園の準備をしたり、閉園後も事務作業をしたりする必要があり、勤務時間が長くなりがちだ。離職率が高く、新人保育士の指導に時間をとられて残業せざるをえないケースもあるという。
政府は21年4月、各クラス1人必要とする常勤保育士を短時間勤務の2人で代替することを認めた。対象は待機児童のいる市区町村に限定し、「園児の定員に空きがある」「保育士が足りない」という2つの要件を同時に満たすことも求める。
自治体からは「同時に当てはまる例がなく、活用できていない」(兵庫県西宮市)と適用の難しさを指摘する声があがる。
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政府が規制緩和の対象を絞るのは、1人の保育士にできるだけ長く子どもを見続けてもらいたいという考えに基づく。その結果、自らの子育てなど家庭と両立するため、短時間だけ働きたい人の希望とかみ合わなくなっている。
待機児童はいなくても、自宅や職場の近くなどの希望施設に空きがないために起きる「隠れ待機」の続く自治体は緩和の対象外だ。全国の待機児童数は22年4月1日時点で2944人と1994年の調査開始以来最も少なくなった一方、隠れ待機は20倍の6万1283人に達しており、短時間勤務の保育士へのニーズは大きい。
岸田文雄首相は少子化対策を経済支援の拡大、子育てサービスの充実、働き方改革の三本柱で進める考えを示した。子育てサービスの充実の壁になりそうなのが担い手となる人材の確保で、短時間勤務を広げつつ、待遇改善を進めることが欠かせない。
中央大学大学院の佐藤博樹教授は保育士として働きたい人を増やすために「企業のようにキャリアパスをもっと見えやすくすることが大切だ」と語る。保護者の相談にのる専門的な資格や、求職者が事前に園の保育方針を知ることができる仕組みも考える必要があると提起する。(2月6日日本経済新聞 記事より)