介護事業所様向け情報(労務)8月号④

精神障害にかかる労災の支給決定件数 過去最高の608件

長時間労働や仕事のストレスによって過重な負荷がかかり、従業員が脳・心臓疾患や精神障害を発症するケースが増加しています。先日、これらの労災請求状況に関する令和2 年度の集計結果が厚生労働省より発表されました。以下では集計結果の内容についてとり上げましょう。

1. 脳・心臓疾患の労災補償状況

脳・心臓疾患の労災請求件数は784 件となり、前年の936 件から152 件減少しました。支給決定件数についても194 件と、前年の216件から22 件減少しています。支給決定件数について業種別にみていくと、「運輸業、郵便業」が全体の3 割近くを占め、「卸売業、小売業」、「建設業」と続いています。

2. 精神障害の労災補償状況

 精神障害の労災補償状況は下図のとおりです。

令和2 年度の請求件数は2,051 件となり、前年の2,060 件から9 件減少しました。一方、支給決定件数については608 件となり、前年の509 件から99 件増加し、過去最高となりました。また認定率については31.9%であり、申請の3 件に1 件の割合で労災として認定されています。このうち、支給決定件数を具体的な出来事別に分類すると、上位項目は次のとおりです。
①上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(99 件)
②悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(83 件)
③同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた(71 件)
④仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった(58 件)
⑤特別な出来事(54 件)
「①上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」については、2020 年5 月29 日に心理的負荷による精神障害の認定基準が改正され、新規に追加されたものです。

3. パワーハラスメント防止措置の義務化

 職場におけるハラスメントの問題は、年々深刻化しており、それが今回のように精神障害の原因にもなり得ます。そのため、企業においてはハラスメント防止に向けた積極的な取組みが求められます。
 パワーハラスメント防止措置は、大企業では2020 年6 月1日より義務付けられていますが、中小企業でも2022 年4 月1日より義務付けられます(それまでは努力義務)。 

 

企業としては、長時間労働対策を徹底するとともに、業務の内容において過剰な負荷がかかっていないかを確認し、さらにはパワーハラスメント防止に向けて、研修を行ったり相談窓口を周知したりするなどの取組みを進めていく必要があります。

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