保育士が足りない③

サヨウナラ、今日ハピラフヲ食ベタネ」。東京・池袋の繁華街からほど近い、あい・あい保育園東池袋園(東京・豊島)。平日の夕方、帰宅する親子がキーホルダーをかざすと、体長70センチメートルのクマ型ロボットが口を開いた。2018年8月に導入した「ヴィーボ」だ。


保育士の負担を減らすロボット(東京都豊島区)


園だよりや保育日誌、自治体への報告書作成――。保育所ではいまだに手書きによる事務作業が珍しくない。同園を運営するグローバルブリッヂホールディングスが開発した業務支援システムは、こうした作業をICT化し、「毎月保育士1.4人分の労働時間を減らす」と社長の貞松成(38)は説明する。


乳幼児突然死症候群の予兆がないか。昼寝中の園児を5~10分ごとに確認していた作業はシステム導入後、オムツにつけたセンサーでダブルチェックできるようになった。「保育士の精神的な負担が軽くなった」と施設長の高山京子(41)。ヴィーボは話題のきっかけにもなり、設置園は未設置の園と比べて保護者との会話時間が1.5倍に増えたという。


東京都の調査(18年度、複数回答)によると、保育士の約半数が「保育計画書の作成」や「保護者対応」に負担を感じている。ずっと働きたいと思える職場にするには、こうした仕事の効率化が欠かせない。


「子供と接しなくていい時間をあえてつくる」。保育所で逆説的ともとれる「ノンコンタクトタイム」を導入する動きも広がる。まちのこども園代々木公園(東京・渋谷)はそのひとつ。「子供との時間はいくらあっても足りない」と園長の山岸日登美(50)。今年から保育士が1日40分程度現場を離れ、勉強などにあてられるようにした。


短時間であっても気持ちのゆとりが生まれる。運営会社代表の松本理寿輝(39)は「保育士が専門性を高め、誇りを持って働けるようにしたい」と話す。


保育所とシニアを結びつける取り組みも進む。高田勇紀夫(67)は日本IBMを60歳で定年退職した後、保育士資格を取得。都内の保育所で「じじ先生」として働いている。厚生労働省もシニア人材の活用を想定し、朝と夕方の時間帯に限り、保育士の人員配置基準を緩和した。「お金を稼ぐよりも社会貢献したいというシニアは多い。保育の仕事と相性は良い」


重労働の割に薄給といわれ続けてきた保育士。ようやく働きやすさを議論する土壌が整ってきた。


(敬称略 日経電子)

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