ケアプラン連携システム(上乗せ処遇の条件)
◆思い返すと、加算項目に「LIFE」が加えられた時にも同じような議論がありました。
「LIFE」とは、介護サービス利用者の心身状態やケア内容を全国規模でデータ収集(事業が登録)し、統計・標準化されたフィードバックを事業所に返す仕組みのこと。これにより、これまでの職員の経験・勘に頼りがちだったケア内容に対し、「実証に基づくケア(Evidence-based Care)」が可能となります。
また全国の類似サービスとの比較が可能になり、ケアの質の底上げにつながる期待についても強調されました。
今回の「ケアプラン連携システム」も同様であり、加えてデータ入力の簡素化やケアプランの共有・転記作業の削減など、事務負担軽減・業務効率化・生産性向上にも寄与する目的も言われています。例えば従来の紙ベースのやり取りがオンラインで完結するようになり、「作業にかかる時間」「心理的負担」の削減が見込まれる、という感じでしょうか。
◆国も将来的な全国的プラットフォーム(いわゆる介護情報基盤)の構築を視野に、現段階での「ケアプラン連携システム」「LIFE」の導入を強く促しています。
先述した加算項目への追加や、その他にも助成金やキャンペーン等で導入コストを抑えるよう呼びかけされるなど制度のバックアップも進んでいます。
こうした背景には、急速な高齢化と、それに伴う要介護者・要支援者の増加、それに伴い人手不足とコスト抑制を両立させなければならない介護保険制度の持続性という国全体の課題があります。
◆ただその一方で、制度の土台となるICTやデータシステム自体には、現場での実用性や導入/運用の負担感への懸念も根強くあります。
今回の、ケアプラン連携システムを処遇改善の条件にする案には反対意見も多く、実際に活用実績や利用率が低く認知もされていないじゃないかという指摘があります。
紙ベースや従来のやり方に慣れた事業所にとっては、移行に対する抵抗感もありますよね。またLIFEも含め現時点で「どこまで日常業務に組み込めるか」「費用対効果がどれほどか」「入力の手間や人的リソースがどの程度かかるか」という実務面での課題や疑問もあります。もっと言えば、制度として「LIFE利用=良質なケア」という図式が「本当にそうなの??」と思われているのではとも感じます。
現場の「人」が担うケアの質や温かみといった面が重視される業界です。
それでも、業界として(内容の精査や意見の反映は行いながら)従うべきと考えます。
◆まずは大きな話として、介護報酬や処遇改善を含めた制度維持・向上には、国民負担・限られた財源の中で「効率・公平・質の担保」がますます求められる実情にあること。ICTやビッグデータによる標準化・可視化は、その要請に応える現実的な手段です。
介護現場にとって、短期的には導入に伴う負担増が発生するかも知れませんが、長い目で見て情報連携による事務負担の軽減、またケアマネや介護職員の負荷軽減につながるとなれば、人材の離職防止や働きやすさ改善にも貢献します。
慢性的な人手不足の中では避けて通れない、重要な側面です。
またデータに基づいたケア設計は、事業所間、職員間の質のバラつきを是正する可能性があります。業界全体の質の底上げ、またしっかり取り組んでいる事業者が正当に評価されるためにもデータは必要です。
繰り返しになりますが、使い慣れるまでは入力や運用は大きな手間かも知れません。でも制度が整い、今よりもっとICTが普及して業界全体のリテラシーが上がることにより、将来的には「当たり前」のインフラになる可能性もあります。
『ケアプラン連携システムやLIFEを導入して何が変わんねん』との考えもあるでしょう。業界が抱える課題は多数・多岐にわたっており、個別の解決だけでなく全体としての最適解も議論する必要があります。
生産性向上が声高に叫ばれる今、分岐点なのだと思います。






