「医師の働き方改革」今後注目される「オンコール」の取り扱い

このテーマは「医師の働き方改革」自体がテーマではありません。古典的なテーマである「残業代」と「オンコール」について,最近の裁判例を含めて分析してみたいと思います。というのも,医師の働き方改革により,勤務医やスタッフの勤務時間(残業代)に対する意識が強くなるということが予想されるためです。 

(1)「医師のオンコール待機(宅直当番)は労働時間とはならない」とした奈良地裁平成27226日判決(奈良病院事件)

裁判所は「宅直当番を担当している医師は,産婦人科医師らの申合せにしたがって,宿日直担当医師その他本件病院の職員から連絡があった場合には直ちにその指揮監督下に入ることができるように努めていたと認められるものの,それを超えて,宅直当番の全時間について本件病院の指揮監督下にあったとまでは認められない」と認定しています。つまり,奈良病院事件は,病院固有の事情が色濃く反映されている裁判例ということができます。したがって,奈良病院事件の判決があるからといって「オンコール待機には残業代が発生しない」と結論づけることは危険ということになります。

(2)オンコール待機について労働時間と判断した最近の判例

そして最近,このオンコール待機について真正面から残業代が発生すると判断した裁判例が出現しました。横浜地裁令和3218日判決です。この判決は訪問看護に従事する看護師のオンコール待機について判断したものですが,オンコール待機を「労働時間」を判断しています。

具体的には「呼出しの電話に対し,直ちに相当の対応をすることを義務づけられていた」として,労働時間性を認定し,合計で1000万円を超える残業代を認めています。奈良病院事件に比べ,結論に至る論理自体はすっきりしたものですが,「パンドラの箱が開いてしまった」という感じは否めません。使用者側は「管理監督者に当たるので残業代は発生しない」「管理者手当が残業代に当たる」との主張をしていましたが,すべて裁判所に否定されています。その上,この判決では「付加金」の支払いも命じられています。付加金とは残業代を支払わない使用者(会社等)に対するペナルティーのようなものです。本件では800万円弱の付加金の支払いを命じています。使用者側は合計で2000万円近い金額を支払うことになってしまったのです。病院にとっても,この事件は決して他人事では済まされないものになるでしょう。医師の勤務時間に対する意識の高まりから,医師のオンコール待機に関する残業代請求が行われる可能性は否定できません。医師の場合,残業代算定の基礎となる給与自体が高額ですから,本件に比べさらに高額な支払いが命じられるリスクがあります。複数の勤務医から同時に請求された場合は,さらにインパクトのあるものになるでしょう。

(3)医師の働き方改革が進んでいる以上,医師のオンコール待機と残業代という論点は,今後避けて通れない問題になると思います。オンコール待機について残業代の請求が行われるというリスクも十分考慮した上で,人事制度を構築していく必要があるでしょう。(参考:杜若法律事務所判例情報)

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