【医師が解説】スタッフの“ちょっとした投稿”で大炎上…クリニックの「適切なSNS活用法」とは
近年、インターネット・スマートフォンの普及により、多くの人がSNSを使っています。SNSの活用はクリニックの運営にプラスの側面がある一方、「炎上」と隣り合わせの諸刃の剣です。そこで今回、高座渋谷つばさクリニック院長の武井智昭氏がクリニックにおけるSNSの活用法と「炎上」を回避するためのノウハウを解説します。
「SNS炎上」医療機関も例外ではない
2023年現在、FacebookやX(旧:Twitter)、InstagramといったSNSを通じて、誰もが気軽に今の気持ちや現況などの情報を発信できる社会となりました。事故現場や公共交通機関の遅延・運休の様子を投稿するなど、現況をよりリアルに客観的に伝えることが可能となり、情報化社会のメリットを実感することも多いです。
一方で、ジャンルを問わず不適切な発言・問題行動を撮影した静止画や動画などは、あっという間にインターネット上で拡散してしまい「炎上」するケースも増加しています。
これは医療機関も例外ではありません。実際、過去に「炎上」したクリニックの話も耳にします。
医療機関は、個人情報をはじめとした秘匿性の高い情報を多数取り扱う組織です。このセキュリティが甘くなってしまい、院長を含めたスタッフがSNSを通じて個人情報をインターネット上に漏洩してしまうと、個人情報保護法や刑法に抵触するレベルになってしまいます。
クリニック名義のSNSを利用する場合、基本的には新たな診療を行う、あるいは休診のお知らせ(臨時を含めて)などに留めておいたほうが無難です。治療効果などの写真は医療法に抵触する場合もあります。
これに加えて、スタッフによる患者個人またはクリニック管理への不平不満・愚痴の書き込みによっても、画像などからクリニックが判明して、負のイメージが強くなる恐れもあります。そして、こうしたSNSの書き込みを完全に消去をすることは困難です。
非難が高まるにつれて、評判の低下によるクリニックへのダメージは大きくなるでしょう。そして最悪の場合、患者数減少やスタッフの離職・採用難が続き、収拾がつかない事態となることもあるのです。
スタッフの書きこみによる炎上…どう防ぐか
スタッフがSNSに書き込む背景として最も多いものが、管理者やクリニックの体制・人間関係への不満です。精神的なストレスの発散や、自身の事や考えを他人に知ってほしいという承認欲求が元凶となります。
クリニックへの不平不満の書き込みを防ぐには、定期的なミーティングなどを通して、院長などの管理者がしっかりとリーダーシップをとって、クリニックのビジョンをぶれることなく繰り返し伝達していくことが重要です。
ミーティングを通して、小さなことでも良いので、スタッフの不満(改善してほしい点がある)をくみ取りましょう。汲み取った不満を無下にしないでレスポンスする環境を整えることが重要です。
なかには、SNSに書き込むことで独自の正義感を貫くという考えの人もいます。
一方で、自分自身の発言や行動が、勤務先やクリニックにマイナスの影響を及ぼすということを想像できない、相手の気持ちを汲み取ることができないタイプもいます。このような人は、自身の行動がそもそも悪いと思っておらず、SNSが自分の身内だけのコミュニケーションツールと思いこんでいる場合が多いです。
こちらに関しても自分の言動が自身の仕事(給与・待遇)にブーメランとして返ってくることを認識してもらう必要があります。
就業規則内でSNSの利用ルールを明示しよう
前述したように、クリニックは機密性の高い個人情報を取り扱うことが多いです。このため、業務中の個人のスマートフォンの持ち込みに関しての取り決めを行い、就業規則に盛り込むべきでしょう。
スマートフォンを完全に禁止する医療機関も多いですが、近年では家族(子供や介護を要する親)からの連絡など、一部の例外は許可をするクリニックもあります。しかし、どこまで就業規則に盛り込んだとしてもプライベートでのSNSの利用を禁止することは不可能です。
そこで就業規則で情報漏えい・個人情報保護などに対する規定を設けることに加えて、SNSを利用する際に注意すべき点をまとめた「SNS利用ガイドライン」を設け、倫理面から不用意な投稿を控えるように促すとよいでしょう。特に、クリニックの名前でSNSを発信する場合には、院長など管理職の許可を要するといった規制を設けることが重要です。
例としては、
◎患者のレントゲン所見・心電図・顔写真を原則として投稿しない。
◎匿名であっても医療職として公序良俗に反した投稿はしない。
◎勤務先が判明してしまう写真(建物や外観)を投稿しない。
◎不適切な投稿を発見した場合には削除を求める。
などが挙げられます。
クリニックの品位を保つためにも、入職時の説明などを通して理解してもらうことが重要です。入職時には職員として勤務するために秘密保持を宣誓しますが、改めて文書で伝達するなどの工夫も欠かさず行いましょう。
- 著者:
- 武井 智昭/高座渋谷つばさクリニック 院長
小児科医・内科医・アレルギー科医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業。
多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。
(編集:株式会社幻冬舎ゴールドオンライン)
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