〈社説〉「不適切」な保育 質を確保する環境整えて

全国の保育所で昨年4月~12月、子どもの心身に有害な影響を及ぼす「不適切」な保育が計914件確認された。うち虐待と認定されたのは90件に上る。

 こども家庭庁が、全国の市区町村を対象に行った初の実態調査である。園児への脅迫的な言葉がけや乱暴な関わりについて、保育所などから情報が寄せられた事例を尋ねた。

 都道府県別では東京が173件と最多で、岐阜、神奈川と続く。虐待の認定も東京が最多(24件)で、次いで静岡、愛知など。長野県内は不適切保育が55件で、虐待のケースはなかった。

 被害を訴えることが難しい乳幼児への虐待は、決して見逃されてはならない。保育所での虐待について自治体への通報を義務づける児童福祉法の改正も必要になる。

 一方、保育が不適切かどうかの見極めは難しい。保育所や自治体の間で捉え方にばらつきがあることが、調査から浮かび上がる。

 同庁が市区町村と並行して行った全保育所への調査では、約7割が不適切保育はゼロと答えた。片や82施設は31件以上と回答。結果として、全体の0・4%の施設で全件数の約4割を占めた。

 こうした実態を受け、同庁は不適切保育の考え方を整理してガイドラインをまとめた。

 虐待については身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4類型とし、たたく、蹴るなど暴力や、部屋の外に閉め出す、おむつを替えない、無視したり他の子どもと差別したりするといった例を示している。不適切保育の具体例には言及していない。

 「不適切」かどうかの判断は、場面によっても異なる。線引きの厳密さにこだわるよりも、子どもの育つ権利を守る「適切」な保育の環境を整えることで、不適切保育を防いでいきたい。

 子どもの人権を擁護し、専門知識や技術を高めるには、保育士が学べる機会が重要になる。

 職場のコミュニケーションも大切だ。イライラして強い口調になる。食べ物をこぼした園児をとがめてしまう―。こうした保育士の言動に周りが気づいたとき、声がけができるかどうか。

 現状は、ぎりぎりの人数で毎日の業務に追われ、園児への目配りさえ十分とは言い難い。要因の一つが、先進国最低レベルとされる国の保育士の配置基準にある。

 慢性的な人手不足が、不適切保育の温床になっている。保育士の待遇の改善こそ、こども家庭庁が優先すべき仕事である。(毎日新聞社説より)

 

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