毎年の定期健康診断を受けない職員がいます。本人がどうしても受けたくないという場合は、そのままにしていても法的に問題ないのでしょうか?
定期健康診断の法的な位置づけを理解する
定期健康診断の実施は、事業主に義務付けられてています。
職員はクリニックが実施する定期健康診断を受けなければならない義務があります。院内で実施できない項目があれば、医師会の健診センターなどを利用するといいでしょう。
クリニックが実施する定期健康診断を本人が拒む場合は、他の医療機関等で受診した健康診断結果を提出してもらうようにしなければなりません(労働安全衛生法66条)。クリニックに定期健康診断が義務付けられている以上、職員が拒否するからという理由で、その後受診命令を出さずに放置していると、クリニックには、次のようなリスクが発生する可能性があります。
従って、院長は定期健康診断については法的に「クリニックには実施義務」「職員には受診義務」があることを理解しておく必要があります。
健康診断を拒否すると、職員は業務命令違反に問われる
健康診断受信拒否で争った判例として「放射線暴露の危険性を理由に胸部エックス線検査の受診命令を拒否した中学校教員に対し、学校側の減給処分を、判例は有効と判断しています。
その理由は、安全衛生法の規定から見て、教職員は受診義務を負うものであり、学校における集団感染を防止するために検査の必要性があると判断されたものです。
またこの判例では、職務命令違反、職務専念義務違反にも該当するとしています。この判例で示されているように、職員が定期健康診断の受診を拒否し、クリニックからの再三の受診命令にもかかわらず、職員が拒否する場合には、業務命令違反として懲戒処分の対象となりえます。
日頃から職員の健康状態を観察する
院長は、クリニックには職場の安全配慮義務が課されていることを認識し、職員の健康状態については、日頃から目をくばるようにしなければなりません。
健康診断を受診しない職員について、法的な位置づけや判例などの踏まえて、職員に「クリニックには健康診断を実施する義務があり、もし職員がそれを拒否する場合、クリニックの責任が問われる」ことを説明します。
また逆に、「受診命令に従わなければ、業務命令違反として懲戒処分の対象になる可能性があること」についても認識してもらいます。
また、検診の結果、日頃の業務で健康状態を観察するよう指示された場合には、特にどの点に注意したらいいのかをしっかり確認してください。
異常所見者には特に注意を払う
健診結果に、異常があると診断された職員について、必要ある場合には、勤務場所の変更、勤務時間の短縮などの事後措置を講じなければなりません。
このような場合に会社が特段の措置をとらなかった場合、会社の安全配慮義務違反を判例は認めています。会社は、このような職員には、健康を悪化させないように注意する必要があります。