介護経営ニュースレター バックナンバー

消費税増税に向けた介護事業者の心構えと事前準備について

平成24年9月7日、社会保障審議会 介護給付費分科会にて「介護保険サービスにおける消費税の取り
扱いについて」というテーマについて話し合いが始まりました。
2012年8月10日、参議院本会議で社会保障・税一体改革法案が可決され、これらを背景に2014年(平成
26年)4月1日から消費税が5%から8%に、2015年(平成27年)10月1日から消費税が8%から10%に上がること
が確定しているのは皆様もご存知の通りです。今回のニュースレターでは、この増税が私たち介護事業者
の経営に与える影響について考えていきたいと思います。


介護事業は、サービスによっては経費の中に課税対象のものが多く含まれているにも関わらず、売上の中
で大きな割合を占める介護保険報酬は非課税、という経営環境にあります。
例えば、消費税が8%アップするという事は、少なくとも課税対象経費の支出が3%アップすることとほぼ同義
であり、経営的に少なからず厳しい状況に追い込まれるであろうことは間違いありません。
また、他方では、現代の環境の中で、各家庭の収入がこの数年間で上昇するとは考えにくく、増税は結果
的に可処分所得の減少、という事態を生み出す可能性が高い、と考えるのが現実的でしょう。
そうなると、介護サービスの利用を現状より控えざるを得ない、という家族が出てくることも十分に想定され、
先ほどの経費増とあいまって、自社の経営が大きく圧迫される深刻な事態に陥る可能性も出てきます。
一方、こんな話をすると、「消費税アップって、社会保障の充実の為にやるって聞いていたのに、ますます
介護事業の経営が厳しくなるなんておかしいんじゃないの?少なくとも報酬は上がるんでしょ?」と思われ
る方もいらっしゃるかもしれません。そこで、次は報酬増額の可能性について見ていくことにしましょう。


2012年8月10日に成立した改正消費税関連法では、「医療機関等における高額の投資に係る消費税の
負担に関し、新たに一定の基準に該当するものに対し、区分して措置を講ずることを検討し、医療機関等
の仕入れにかかる消費税については、診療報酬等の医療保険制度において手当をすることとし」という文
言が記載されています(事実、1989年に消費税が創設された際には医療の診療報酬は0.76%、税率が3%
から5%にアップした97年4月には0.77%が上乗せされ、影響が大きいと考えられる項目の報酬単価は引き
上げられています)。介護も「医療機関等」に含まれることを考えると、イレギュラーなタイミングではある
ものの、2014年4月の増税に伴い、介護報酬も増額される、と考えるのが自然でしょう。では、今回の増税
で、果たして報酬増加に十分な資金余剰が生まれるのでしょうか?具体的に数字を見ていきましょう。
今回の増税(5%アップ)に伴い、約13.5兆円の税収が生まれると言われていますが、その内、社会保障の
充実に充てられるのは2.7兆円(=5%アップの内の1%分に相当)であるとされています。しかし、その「2.7兆
円」という数字も単純な予算ではなく、内訳としては「充実策として3.8兆円」「重点化・効率化で-1.2兆円」
差額で約2.7兆円の予算、という構図になっています。即ち、増税に伴い、報酬増加も各分野毎の状況を
見ながら実施しつつ、一方では「重点化・効率化」という大義のもと、報酬減額も同時に検討・実施する、と
いうことが明言されていることに我々は注目する必要があります。
また、「社会保障」と言ってもその範囲は幅広く、中には子育てや医療・介護・年金等の分野があります。
そこで、上記の「3.8兆」「-1.2兆」という数値の中から介護分野の部分だけの数値を抜き取ってくると、
「在宅介護の充実等」という名目で2800億円の予算が計上されている一方で、「介護予防・重度化予防・
介護施設の重点化(在宅への移行)」で-1800億円、という予算も計上されています。
介護分野に回ってくるお金の少なさにも驚かされますが、実質マイナス改正とも言われた前回の法改正に
引き続き、この増税時においてですら、サービスによって増額も減額も有り得る、という事実に釈然としない
方も多いのではないでしょうか。
しかし、増税、という国民に痛みを強いる施策を実行する以上、社会保障各分野に対して何の見直しも実
施せずに「聖域」として扱い、一律増額を行う、ということでは、国民の納得を得られるはずもありません。
その意味では、介護報酬の改正には、これまで以上に国民から厳しい視線が注がれてくる、と考えるのが
自然であり、将来の財源枯渇の可能性も踏まえると、「増」「減」が発生するのは、或る意味「当然の流れ」
だと理解せざるを得ないのではないでしょうか。


増税に伴う報酬充実策の実施は、課税対象経費が比較的大きな割合を占める(≒人件費率が低い)サー
ビスや分野において重点的に行われると予測できるものの、予算面から考えても、それらによるプラスの
影響は限定的であり、経営的には大きなインパクトを見込めない、と考えておいた方が賢明でしょう。
また、上記以外にも報酬改正のタイミングの問題や(=増税のタイミング毎に改正に着手するとなると、
2014年4月、2015年4月、2015年10月、と短期間に3回の改正を実施しなければならず、事務方が大
混乱する)、そもそも介護報酬を非課税のままにするのかしないのか、という大きな課題も残っています。
少なくとも、今回触れさせていただいた「経費増大」「サービス利用控え」「報酬増額だけでなく、減額の見
直しも同時に行われる」という問題は2014年後以降に確実に発生するものと思われますので、経営者の
皆様としてはそれこそ「聖域」を設けず、コストダウン対策やサービスモデルの見直し、ご利用者満足のア
ップ等、然るべき打ち手を早めに準備しておくことに意識を向けられることをお奨めします。
我々CB-TAGとしても、今後、最新情報が入り次第、皆様へ発信させていただくように致しますし、有効な
手立てがあれば積極的にご提案をさせていただくようにしたいと思います。

新たな資格「認定介護福祉士(仮称)」の検討状況について

平成23年1月、「今後の介護人材の養成のあり方について~介護分野の現状に即した介護福祉士の養成のあり方と介護人材の今後のキャリアパス~」という報告書が国から発表されました。その報告書の中で、「介護福祉士取得後のキャリアパスについては、現在のところ十分な仕組みがない。資格取得後の展望を持てるようにするためにも、その後のステップアップの仕組みが必要ではないか?」という問題提起が為されたことに端を発し、現在、新たなキャリアパスの方向性として、「認定介護福祉士(仮称))」という資格創設に関する議論が進められています。


認定介護福祉士(仮称)」創設には、主に3つの狙いがあるとされています
1.介護福祉士の資質を高め、利用者のQOLの向上、介護と医療連携強化と適切な役割分担の促進、地域包括ケアの推進など、介護サービスの高度化に対する社会的な要請に応える。
2.介護福祉士に対する、他職種、事業者、利用者・家族等からの社会的な評価を高める。
3.介護福祉士の資格取得後のキャリアパスを整備する。

上記を踏まえ、認定介護福祉士(仮称)には、次のような役割イメージ、求められる実務経験レベル、養成研修体系が想定されています。

≪役割イメージ≫1.介護チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)のリーダーに対する教育指導、サービスのマネジメントを行い、介護チームのサービスの質を向上させる役割
2.利用者の生活支援において他職種と介護チームとの連携・協働を促進する役割

≪実務経験レベル≫1.実務経験7~8年以上。
2.介護チームのリーダーとしての実務経験を有することが望ましい。
3.居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験をもつことが望ましい。
(いずれかの経験がない場合には研修によって補うことも検討されています。)

≪養成研修体系≫養成研修は現在、2段階で設計されています。
第一段階の研修(200~250時間程度)
→介護実践力の確立を図ることを目的とし、チーム運営、医療、リハビリテーション、心理・社会的ケアの知識を獲得・統合すると共に、チームにおける介護過程の展開を指導できる力を養成する。
第二段階の研修(200~250時間程度)
→認定介護福祉士(仮称)としての実践力の確立を図ることを目的とし、介護チームにおけるサービスマネジメント等の知識を学び、チームの介護実践の改善・指導力を養成する。

※研修体系については、「認定介護福祉士の研修を受講するような人材は現場においては中核的な役割を担っている場合が多く、これだけの研修時間を確保するのは、介護現場としてはかなり厳しいのでは?」という声が現場から上がっており、目下、短縮パターンの確立を進めています。 (短縮パターンの研修カリキュラム案については、実証作業が始まる来月以降に開示される予定)


認定介護福祉士(仮称)制度の導入開始時期等については、現時点ではまだ明言されていません。
しかし、第1段階研修の検証作業が来月10月13日から一部の介護職を対象に開始されることが既に決まっていることから考えると、おおよそ次のようなスケジュールになることが推測されます。
・平成24年度⇒第1段階研修の検証開始(トライアルのため一部事業者の職員のみを対象)
・平成25年度⇒?第2段階研修の検証開始
?(検証結果を受けて)第1段階研修の本格開始
?認定環境の整備(認定機関の整備、認定プロセスの確立etc)
・平成26年度⇒?(検証結果を受けて)第2段階研修の本格開始
?平成27年度介護保険法改正との関連性を整理、確立
・平成27年度⇒認定介護福祉士(仮称)制度の本格推進開始

介護職員の新たなキャリアパスモデルとして推進されようとするこの認定介護福祉士(仮称)制度、国としても積極推進体制を敷いてくる可能性が高いと思われます(特定事業所加算やサービス提供体制強化加算等の体制加算要件に付加されるetc)。
介護事業経営者としては今後の進捗に注目し、自社の経営にどのように活かすかについて、先んじて検討を進めておいたほうが良いかもしれません。
CB-TAGとしても、今後、最新情報が入り次第、皆様へ発信させていただきます。
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介護経営ニュースレター 8月号

「介護プロフェッショナルのキャリア段位制度」が秋からスタートします!


平成22年6月、政府は「21世紀の日本復活に向けた21の国家戦略プロジェクト」を発表しました。
その中の1つとして、日本版NVQ(※)とも呼ばれる「キャリア段位制度の推進」が提唱され、第1次対象分野として、「食(6次産業化プロデューサーの育成)」「環境(カーボンマネージャーの育成)」と共に「介護(介護プロフェッショナルの育成)」が掲げられたことが、今回の制度発足の背景となっています。
介護従事者のやりがいを創出し、業界全体のレベルアップを図ると共に、介護分野へ参入する人材を増やすことをも目指す「キャリア段位制度」。今回は、本制度の概要について分かりやすく説明します。
※NVQ・・・イギリスで20年以上前から導入されている国民共通の職業能力評価制度のこと。


大きな特徴としては、次の3つが挙げられます。
(1)介護サービスの種類に関わらず、横断的に全ての介護職の能力を評価する「共通のものさし」をつくることで、より効果的・効率的に人材育成を実現しようとしていること。
(2)エントリーレベルからトップ・プロレベルまで介護職員を7段階に分け、各々に段位認定を行うことで職員のやりがいやスキルアップへのモチベーションを創出しようとしていること。
(中でもレベル4以上の人材は「介護プロフェッショナル」と定義されています。)。
(3)「資格はあるが、実際どの程度の職務が遂行出来るのかが見えない」という現場課題を解決するため、「わかる(知識)」と「できる(実践的スキル)」の両面からの評価を実施すること。
※「わかる(知識)」については、既存の国家資格制度や研修制度との整合性を考慮する予定。
 (例) レベル1~2の「わかる(知識)」基準:ホームヘルパー2級研修終了相当以上
    レベル3の「わかる(知識)」基準:介護福祉士養成課程修了および実務者研修終了
    レベル4の「わかる(知識)」基準:介護福祉士であること(国家試験合格者)
 

「分かる(知識)」については既存の資格制度との連動で評価しますが、「出来る(実践的スキル)」については「アセッサー(仮称)」と呼ばれる人が仕事の様子や業務記録等を見て評価していきます。
このアセッサーは、レベル4以上で、必要な講習を修了し、「共通のものさし」にて評価できる力を身につけた者と定義されていますが、制度開始時点では講習修了者が居ないため、開始から3年間は、介護部門のリーダーとして一定の要件を満たせば、アセッサー講習を受講する要件を満たすこととする予定です。
また、外部評価機関を設置し、施設・事業所におけるアセッサーの評価の妥当性、信頼性をチェックすることとしています。
その意味でも、介護事業者においては、この「キャリア段位制度」に積極的に取り組む必要があるでしょう。大項目を基礎に、更に3段階にまで細分化した評価項目が複数設定される予定です。
 (例)     基本介護技術の評価>食事介助(1段階:中項目)>食事介助ができる(2段階:小項目)
         >利用者と同じ目線で介助することができたか?(3段階:チェック項目) etc
OJTツールとしても活用でき、在宅・施設共通で、客観的かつ簡素な評価基準を作成すべく、現在、国としては完成に向けた最終段階に入っています。


今後、日本全体の労働力人口は減少するにも関わらず、介護の現場では、現状と比較して約2倍もの職員数が必要になると推測されています。その意味では、他業界以上に、介護業界の人材採用環境はますます厳しくなると言っても過言ではありません。また、働く側の立場から見ても、社員のスキルアップや処遇の改善に真剣に取り組もうとしている企業の方が、職場としてより魅力的に映ることは間違いありませんし、「この会社にいてもスキルアップが出来ないから、、」という理由で好ましい人材が流出してしまうことは、企業にとっては計り知れない損失につながりかねません。また、法人として、ランクの高い人材を育成・維持する仕組みを持つことが出来れば、「うちには介護プロフェッショナル(レベル4以上)が○○人(○○%)もいます」などと、自社のサービスの質をアピールする格好のツールにもなります。更に、国が推進しようとしている施策であることから、今後、サービス体制関連の加算(特定事業所加算やサービス提供体制強化加算etc)要件等に組み込まれる等、何らかの加点評価に加えられることも十分に考えられます。
以上のような観点から考えても、介護事業者は是非、「キャリア段位制度」に積極的に取り組む姿勢を持つべきだと言えるでしょう。具体的には秋以降、各事業所ごとに「アセッサー(評価者)」を設けることから制度の運用が始まると思われます。事業者はその要件や内容をしっかりと把握し、是非、積極的に自社内のアセッサー養成に取り組まれることをお勧めします。

介護経営ニュースレター 7月号

ケアマネジャーをめぐる現状と課題


平成24年3月、社会保障審議会 介護給付分科会は、ケアマネジャー(以降、ケアマネ)の資質の向上と今後のあり方についての検討会を立ち上げました。課題の整理、養成カリキュラム・研修体系のあり方等について、今秋を目途として中間的に整理することを目標に議論が進んでいます(6月23日時点で計3回が終了)。

今後、特にケアマネジメントに係る課題の定義、及び解決策の模索について議論が進むわけですが、現在、課題検討の視点としては、次の3つが特にクローズアップされています。

1.自立支援型ケアマネジメントの推進、
2.ケアマネジメントの公平性・中立性、
3.地域のネットワーク作りと医療等との連携

ケアマネが行うケアマネジメントは、利用者が介護サービスを利用するにあたりその根幹に置かれ、多職種の介護サービスの実施にも影響を及ぼすものです。また、今後の地域包括ケアの中核的な役割を担う存在がケアマネであることを考えると、今後の議論の流れをしっかりと見据え、情報をキャッチし、未来を予測しながら準備を進めていくことが、今後、ケアマネは勿論、ケアマネと密接に連携しながらサービスを進める介護事業者にとっても必要となってくるでしょう。

そんな中、本検討会の中で、利用者に対するリハビリテーションについて議論が交わされました。


介護において、リハビリテーションの意義は急速に大きくなってきており、既に先進的な事例も出てきています。
例えば、兵庫県の中・西播磨圏域では、平成18年から医療と在宅での介護サービスの連携に保健所が間に入り、ネットワークを作り上げています。具体的には、患者として入院したとほぼ同時に担当ケアマネとの契約、介護認定への申請を行い、病院の地域連携室とケアマネとの密な連携により、在宅に戻る際にスムーズにサービスが導入できるよう関係機関・多職種のサービス事業者との調整に取り組んでいるようです。

その中でもリハビリは最も重要な要素を占めています。病院や介護でのリハビリの現状として、リハビリを求めているのは、60歳以上の方が半数以上を占めており、男女比率では男性が3/4と圧倒的に多くなっています。さらに、疾患別を見てみると、脳器質性障害(脳梗塞・脳内出血等)の方が60%を占めています。

一方、リハビリプログラムの内容のマッチングとその満足度は、医療面でのリハビリは高く評価されているものの、介護面でのリハビリの評価は残念ながら医療と比較するととても低い結果になっているようです。その原因としては、

・そもそも受け入れ先がない(少ない)
・制度上困難である(医療保険上のリハビリと介護保険上のリハビリは同時に受けることができない)
・情報がない(窓口が分からない、誰に相談していいのか分からない)

といったことが挙げられています(ご利用者や家族、ケアマネからのヒアリング調査より)。

利用者本人の在宅復帰にあたってのリハビリへの要望としては、心身機能やADLに加え、自主運動に対する指導やアクティビティ―指導が増加しています。特に、料理や買い物、犬の散歩という手段的ADL、散歩、旅行、書道、花の世話などの趣味や社会参加に要望が高まり、そうしたリハビリを行うことにより、対象者の意欲の向上や満足度につながっている傾向も明らかになっています。
ケアマネとしては医療・介護の両面から今まで以上にリハビリ・機能訓練に対する知識・見識を身につける必要が出てくることを想定し、今からしっかりと自覚を持って活動を進めていくことが必要だと言えそうです。

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