クリニックの人事制度(キャリアパス制度)はなぜ人材定着を左右するのか?
― クリニック専門社労士が院長に伝えたい“辞めない組織”の作り方 ―
「最近、スタッフが定着しない」
「給与は近隣相場より高いはずなのに辞めてしまう」
これは、多くのクリニック院長が抱えている共通の悩みです。
しかし私は現場支援の中で、こう断言しています。
スタッフが辞める原因は“給与水準”ではなく、“将来の見通しが描けないこと”にある。
その解決策が、人事制度(キャリアパス制度)の設計と運用です。
なぜ今、クリニックに人事制度が必要なのか?
医療制度を管轄する厚生労働省は、医療機関に対して質の向上・業務効率化・チーム医療の強化を求めています。
一方で、現場では
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医療事務が突然辞める
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看護師が転職する
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中堅が育たない
という問題が慢性化しています。
これは人材不足ではなく、制度不足の問題です。
クリニックで人が辞める3つの本当の理由
面談を重ねると、退職理由の本質は次の3つに集約されます。
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評価が院長の主観になっている
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将来のキャリア像が見えない
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頑張っても処遇が変わらない
小規模組織ほど、この傾向は顕著です。
キャリアパス制度がもたらす3つの効果
① 将来の可視化
「3年後にリーダー」「5年後に主任」など、成長ルートが明確。
② 公平性の確保
“好き嫌い”ではなく、役割基準で評価。
③ モチベーション向上
役割拡大=給与・責任増加が連動。
つまり、組織に“納得感”が生まれるのです。
【具体例】医療事務が定着しなかった内科クリニック
職員15名の内科クリニック。
3年間で医療事務が5名退職。
原因は、
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リーダー職の役割が曖昧
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昇給基準が不透明
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「長く勤めた人がなんとなく上がる」仕組み
でした。
そこで、
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等級制度を3段階に整理
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昇格基準を数値化(レセプト精度、後輩指導、患者満足対応など)
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年2回の評価面談導入
1年後、離職ゼロ。
医療事務の残業も減少しました。
「給与を上げれば解決」は本当か?
確かに賃上げは重要です。
しかし、
給与は“退職の引き止め”にはなるが、“定着の理由”にはならない。
スタッフが求めているのは、
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自分の成長
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専門性の評価
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役割の明確化
です。
クリニックの人事制度設計3原則
1. 職種別等級設計
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看護師
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医療事務
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リハビリ職
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技師
それぞれに役割基準を設ける。
2. 昇格要件の明文化
例:
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レセプト返戻率
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新人教育担当実績
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クレーム対応能力
曖昧さを排除します。
3. 面談制度の固定化
年2回の評価面談を制度として義務化。
制度は“作る”より“運用”が命です。
離職率1%改善の経営効果
職員20名、平均採用コスト50万円と仮定。
離職率15% → 14%
削減効果:50万円
さらに、
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教育期間中の生産性低下
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患者対応の質低下
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院長の採用ストレス
を含めれば、実質的効果はそれ以上です。
キャリアパス制度は、経営の安定装置なのです。
小規模クリニックこそ制度が必要
「うちは20人未満だから大げさでは?」
実は逆です。
小規模ほど、
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不公平感
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属人化
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感情評価
が起きやすい。
制度は“硬直化”ではなく、
組織の透明化です。
2026年以降のクリニック経営
診療報酬改定のたびに、
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効率化
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チーム医療
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人材育成
が強調されています。
生き残るクリニックは、
人材を“採る”のではなく、“育てて定着させる”
経営にシフトしています。
クリニック専門社労士としての本音
スタッフの退職を
「最近の若者は…」
で終わらせていませんか?
辞めるのは、未来が見えないからです。
キャリアパス制度は、
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人材定着
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生産性向上
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医療の質向上
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院長の負担軽減
を同時に実現する経営ツールです。
もし、こんな課題があれば
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医療事務の入れ替わりが激しい
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主任候補が育たない
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評価が感覚的になっている
制度の再設計が必要かもしれません。
クリニック専門社労士として、
人事制度診断・キャリアパス再設計支援を行っています。
制度の目的は書類整備ではありません。
“辞めないクリニック”を作ることです。
院長が診療に集中できる環境を作るために、
今こそ人事制度を経営戦略として見直してみませんか。






