保育士採用で人材紹介会社を使うときの留意点 ― 保育園専門社労士が教える「採用コストを無駄にしないための実務ポイント」

 

はじめに|なぜ今、人材紹介会社の使い方が重要なのか

保育士不足が慢性化する中、「求人を出しても全く応募が来ない」「ハローワークや求人サイトでは限界」という理由から、人材紹介会社(有料職業紹介)を利用する保育園が増えています。

確かに、人材紹介会社は即戦力となる保育士と出会える可能性が高い一方で、

  • 採用コストが高い

  • 早期離職リスクがある

  • 契約内容をよく理解せずにトラブルになる

といった相談も、保育園専門社労士として数多く受けてきました。

本記事では、
「人材紹介会社を使う前に必ず押さえるべき留意点」
を、労務・法務・実務の観点からわかりやすく解説します。


人材紹介会社を使うメリット・デメリットを正しく理解する

人材紹介会社の主なメリット

まずはメリットから整理しましょう。

  • 自園では出会えない潜在層(転職を迷っている保育士)にアプローチできる

  • 採用までのスピードが早い

  • 書類選考や日程調整などの工数が削減できる

特に、急な欠員補充年度途中の採用では、有効な手段となります。

一方で見落とされがちなデメリット

一方、次のようなデメリットも存在します。

  • 採用成功報酬が高額(年収の20〜30%が相場)

  • 採用のミスマッチが起きやすい

  • 園の採用力が育たない

「とにかく人が欲しい」という焦りから安易に利用すると、
結果的にコストだけが膨らみ、定着しないという悪循環に陥りがちです。


留意点① 紹介手数料と契約条件を必ず確認する

紹介手数料の相場と注意点

人材紹介会社の手数料は、一般的に以下のような水準です。

  • 正社員:理論年収の20〜30%

  • パート:一律〇万円、または月給×〇か月分

重要なのは、**「いくらかかるか」だけでなく「いつ・どんな条件で支払うのか」**です。

よくある契約トラブル例

保育園で実際に多いのが、次のようなケースです。

  • 試用期間中に退職したのに全額請求された

  • 返金規定(返戻金)が契約書に明記されていなかった

  • 分割返金だと思っていたら一切返金なしだった

👉 契約書の返戻金規定(返金条件・期間)は必ず書面で確認してください。


留意点② 「早期離職=返金される」ではない

返金規定は会社ごとに全く違う

多くの園長先生が誤解しがちなのが、
「すぐ辞めたら返金されるはず」という思い込みです。

実際には、

  • 1か月以内:全額返金

  • 3か月以内:50%返金

  • 6か月以内:返金なし

など、返金条件は紹介会社ごとにバラバラです。

労務設計が弱い園ほど早期離職リスクが高い

社労士として見ていると、

  • 就業規則が実態と合っていない

  • 雇用条件通知書の説明不足

  • 配置・人間関係の配慮不足

こうした園ほど、紹介採用でも早期離職が起こりやすい傾向があります。

👉 「返金があるから安心」ではなく、「辞めさせない体制づくり」こそ重要です。


留意点③ 紹介会社任せにしない採用面接が重要

面接を丸投げするとミスマッチが起きる

人材紹介会社が間に入ると、
「紹介会社がスクリーニングしているから大丈夫」と思いがちです。

しかし、紹介会社が重視するのは、
**「とりあえず内定が出るかどうか」**であり、
園の文化や方針との相性までは見きれていないことも多いのが実情です。

園側が必ず確認すべきポイント

面接では、以下を必ず園長・主任が確認しましょう。

  • 保育観・価値観(安全重視か、自由保育か 等)

  • チーム保育への適応力

  • 過去の退職理由(人間関係・業務量など)

👉 紹介会社+園のダブルチェック体制がミスマッチ防止の鍵です。


留意点④ 同一候補者の「二重紹介」に注意

複数の人材紹介会社を利用していると、
同じ保育士が別会社から紹介されるケースがあります。

この場合、

  • どちらの会社に手数料を支払うのか

  • 先に接触したのはどちらか

といったトラブルに発展することも。

👉 候補者管理表を作成し、
👉 「どの紹介会社経由か」を必ず記録する
このひと手間が、無駄なコストを防ぎます。


留意点⑤ 人材紹介は「最終手段」と位置づける

紹介依存の採用は危険

人材紹介に頼りすぎると、

  • 採用コストが慢性化する

  • 園の魅力が言語化されない

  • 職員定着率が改善しない

という構造に陥ります。

社労士が勧める理想的な採用戦略

理想は、

  1. 自園採用(HP・SNS・直接応募)

  2. 現在の職員などの紹介(リファラル採用)
  3. ハローワーク・求人媒体

  4. どうしても必要な場合のみ人材紹介

という段階的な活用です。

そのためには、

  • 労働条件の整理

  • 就業規則・評価制度の整備

  • 職員が紹介したくなる職場づくり

といった労務設計の見直しが欠かせません。


まとめ|人材紹介会社は「使い方次第」で成果が変わる

保育士採用において、人材紹介会社は確かに有効な手段です。
しかし、

  • 契約内容を確認せず

  • 面接を任せきりにし

  • 定着の仕組みを整えない

まま利用すると、高い採用コストだけが残る結果になりかねません。

保育園専門社労士としてお伝えしたいのは、
👉 **採用は「点」ではなく「仕組み」**だということ。

人材紹介を「最後の一手」として活かすためにも、
ぜひ一度、園の労務体制・採用戦略を見直してみてください。

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