保護者の声をより的確に把握して、行事などの改善や、 園との相互理解の進展に活かすには

 

第三者評価では、園が保護者の意向をどのような方法で把握し、それを運営やいわゆるサービスにどのように反映しているかを問う項目が設けられています。

毎日のコミュニケーションや定例・随時の面談などを通じて伝えられる個別の意見・要望などとともに、全体的な意向を把握する手段としては、懇談会などの保護者が集まる場での傾聴のほか、行事などの際に行ういわゆるアンケートが、最もポピュラーな方法ではないかと思います。

最近は登降園管理や各種配付物の配信、毎日の連絡帳の記入・確認などを電子端末上で行うソフトウェアが、様々に普及しています。

それらのソフトにはアンケート機能も付帯されていることが多く、それを使ったり、あるいはグーグルが無料で提供するアンケートフォームを活用したりしている園もよく見られます。

いずれも質問の設定の仕方などに慣れるまでは多少苦労しますが、配信後は集計も自動で行われるため、事務負担の軽減には少なからず寄与しているようです。

 

■ 行事後などのアンケートは、園が本来把握したい保護者の声を集められるものとなっているか

媒体が電子であれ紙であれ、行事後のアンケートでは、「ご意見・ご感想をお寄せください」式の、自由記述欄を1つ設けるだけの形や、またはそれに日程・時間や内容などに関する選択式質問を加えた、簡素な構成であることがほとんどです。

特に自由記述1問式の場合、集まる回答のほとんどは感謝の言葉で、その内容も、わが子がどれだけ楽しそうだったかといった、行事そのものへの感想や批評・意見以外のものである場合が多いのではないでしょうか。そうした肯定的な声に交じって、時々「ここが気になった」「こうだったらなおよかった」といった、要望系の内容が書かれている、というところでしょう。

アンケートを何のために実施するのかにもよりますが、改善、つまり次年度の企画を園や子ども・保護者にとってよりよいものとすることが主目的であれば、あまたの感謝・称賛からそうした要望等を拾い出すのが手間となりますし、そもそも要望系の意見が書かれることがあまりない、といった声を、うかがうこともよくあります。

 

■ 意見や要望を掘り起こすための質問の工夫は、集約後のフィードバックとセットで

改善点や要望などを積極的に掘り起こそうとするのであれば、例えば「よかった点」と「気になった点(あるいはもっと直接的に『ご意見・ご要望』等)」といった具合に、「記入欄をはじめから2つ設ける」という方法も1つの案です。質問をあえて設けることで、保護者の記憶の呼び覚ましと言語化を促す、ということです。

そのような形式に変えることで、意見が出やすくなるケースは実際によくありますし、前述の感謝や称賛の中から要望系の内容を拾い出す作業に比べ、取りまとめも楽になります。

ただし、「こうだったらうれしい」を積極的にすくい上げることは、保護者の期待値を高めることにもなり、園の方針に合わず、対応が難しい内容が寄せられることも多くなります。

それらの声を「聴いただけ」、つまりアンケートに書かれたまま何の反応もしない状態にしておくと、その積み重なりが潜在的な不満につながることもありますので、集約後の書面の配付・配信や園便り等への記載、懇談会での説明など、丁寧なフィードバックを行うことが望ましいでしょう。

アンケートで寄せられたポジ・ネガ両方の声を、園の方針とともに保護者に伝え続けることは、園の姿勢や行事に込めたねらいなどを理解してもらううえで、欠かせない方法ではないかと思います。

 

■ 行事後の振り返りの質を高めるうえでも、保護者の声の集め方には一工夫を

行事のねらいについて言えば、選択式の質問を設ける場合に、行事の内容などに関してはそのまま「内容について」、選択肢は「よかった」等、いずれもごく抽象的な表現となっていることがよくあります。

行事は日々の園の保育・教育や子どもたちの成長の姿、それらの積み重ねの成果を伝える、大切な機会です。

行事の企画にもそうしたことがねらいに定められているはずですし、それが的確に保護者に伝わったかどうか、質問や選択肢の内容を工夫して、より把握しやすくすることは、行事そのものの改善だけでなく、園と保護者の相互理解を深めるうえでも、意義あることではないかと思います。

また、評価先で行事後の振り返りの記録を拝見すると、先生方の話し合いが、行事の進行や担当者の動きといった、当日のオペレーションに関する内容のみに終始していることも少なくありません。

もちろん行事そのものの運営をよりよくすることも大切ですが、前述のアンケートの工夫などによって得た保護者の声も参考に、その行事が本来目指したものが達成できたか、保護者にそれが伝わったかどうかなどについても、話し合われてみてはいかがでしょうか。

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