重宝されるスキマバイト保育士、「問題ある人が紛れても排除しようがない」と不安の声も

 保育の現場に広がるスポットワーク(スキマバイト)の全国調査に国が乗り出す。「スキマバイト保育士」は人手不足に悩む現場で重宝されているが、短時間や単発で働くため子どもの特性に合わせた保育が難しく、保護者や働く側からは不安や戸惑いの声が上がる。専門家は、保育所任せの現状を改めるため、国によるルール作りの必要性を指摘する。

詳しい説明なし

 「突然、障害のある子どもを任されて驚いた」。保育士資格を持つ東京都の女性(56)は、3月にスキマバイトとして働いた近所の保育所での出来事をそう振り返った。

 出勤してみると人手不足なのは明らかだった。職員は十分な休憩時間をとれず、園児を寝かしつけながら昼食をかき込んでいた。女性も寝かしつけを任され、その中に障害のある子どもがいた。「ちょっと障害がある」と言われただけで具体的な説明はなく、どのようにあやしても泣き叫ばれて途方に暮れたという。

女性は介護を機に昨年3月、それまで働いていた保育所を退職。以後は時々、スキマバイトをしている。「時間の融通が利くし、人間関係に悩まなくていいのも気楽だ」。ただ、事前に子どもに関する詳しい説明はなく、周りを見ながら手探りで働いているといい、「保育の質は担保されていないと感じる」と明かす。

 大阪府の女性(31)は今春、長男が通う保育所で、他の保護者からスキマ保育士が働いていると聞かされた。保護者から説明を求められた保育所は、「常勤の保育士が休みの際など一時的な利用に限っている」とするお知らせを配布したが、不安になって保育所を退園した家庭もあるという。女性は「(スキマ保育士を)ゼロにしろとまでは思わない」としつつ、「経歴を含めて問題ないと判断した保育士のみにしてほしい」と求めた。

トラブル防止策

 保育所がスキマバイトに頼る背景には、深刻な人手不足がある。

 都内の別の認可保育所では毎日2人のスキマバイトを募集している。園長(40)は「給食や夕方のお迎えなど、人手が手薄になりがちな時間帯に入ってもらえて助かっている」と説明する。

スキマバイトの仲介アプリ最大手「タイミー」(東京)では、保育所に対し、採用した保育士が子どもと1対1にならないようにするなど、トラブル防止の取り組みを推奨している。広報担当者は「一度は保育の現場を離れたが、よい職場に出会えたらまた働きたいという人は少なくない。スポットワークだからこそ人が集まるというメリットもある」と強調した。

 ただ、面接を行わず、履歴書の提出も求めないで採用を決める保育所も多く、「無資格者歓迎」とうたって求人を出すところもある。スキマバイトを定期的に活用している千葉県の保育所に勤める保育士の女性(49)は「どんな人が来るかは当日にならないとわからず、問題のある人が紛れていても排除しようがない」と懸念を口にした。

議会でも疑問

 こうした現状を疑問視する声は、自治体の議会でじわじわと広がってきた。

 千葉県の柏市議会では昨年9月、一般質問で市議が「履歴書も出させず、面接もせず、当日すぐに採用する。子どもの安全上、問題はないのか」と述べ、スキマバイト保育士の雇用をやめさせるよう市に求めた。

東京都の文京区議会でも昨年11月、「頻繁な人員の入れ替えは子どもたちのストレスにもなり、健やかな成長を妨げる」と指摘が出た。

 区によると、区内では昨年度末時点で6か所の保育所がスキマバイトを活用していた。区の担当者は「常態化は望ましくない。目的や運用の実態を確認しておく必要がある」と話した。

 多様な働き方に詳しい立教大の首藤若菜教授は、「スキマバイトの運用を現場任せにしていては、安全な保育ができないだけでなく、雇用の不安定化と人材の使い捨てにもつながり、保育業界全体が不健全になりかねない。採用や運用について、国が具体的なルールを整えるよう検討するべきだ」と話した。(読売新聞 オンライン)

お電話でのお問い合わせ

03-6435-7075(平日9:00~18:00)

営業時間外のお問い合わせはこちらから

相談・ご依頼の流れはこちら

YouTube チャンネル

メールマガジン無料登録

当社代表林正人の著書『社労士が書いた 介護「人材」の採用・育成・定着のための職場作り』が出版されました。

SRPⅡ認証は、社会保険労務士事務所の「信用・信頼」の証です。
社労士法人ヒューマンスキルコンサルティングは、全国社会保険労務士会連合会より社会保険労務士個人情報保護事務所として認証を受けています。【認証番号第1602793号】
→SRPⅡ認証(全国社会保険労務士連合会)
menu