試用期間中に、他の職員ともめたり患者から苦情を受けたりで本採用は難しいと思っています。試用期間中の解雇は認められることが多いと聞いていますが留意点等を教えてください。
採用に当たっては一定期間「試用期間」を設定し、適性などを判断し、本採用するかどうかを判断するのが一般的です。試用期間は法的にも「解雇権が留保された状態」と考えられており、試用期間中は通常時に比べて、解雇が広く認められる傾向にあります。
ただ、解雇が認められやすいといっても、「解雇権法理」は適用され、「客観的合理性」が存在し、「社会通念上相当なもの」でなければ、解雇無効と判断される可能性もあります。
解雇理由となりうる例としては「遅刻、欠勤が多い」「上司の指示に従わず業務に支障をきたしている」「必要な職務能力に欠けている」「病気やケガで勤務を全うできない」等が挙げられます。さらに、それらの改善を促す働きかけを行ったにもかかわらず、解消の見込がたたない場合に解雇が有効になるとされています。
とはいえ、クリニック側からすると明らかに非があるはずなのに、職員は納得していません。そのため、今後職員がクリニックを訴えてきた場合、クリニックはその正当性を証明する必要があります。能力不足を理由に解雇する場合には、在職中に口頭で注意、指導した書面を文書でのこしておく必要があります。
トラブルを避ける3つの対策
1. スキルチェックの活用
試用期間中に身に着けてほしい知識やスキル、職員としてふさわしい勤務態度などの項目をチェックシートにまとめておくといいでしょう。このチェックシートを活用して、評価結果の面談を行うといいでしょう。これが指導記録にもなり、また本人に具体的に課題を認識して頂き、改善につなげることも期待出来ます。
2. 試用期間延長
試用期間中では本採用の可否を決めきれない場合には、試用期間を延長することも可能です。就業規則には延長することもできる旨の記載が必要です。
3. 真摯な話し合い
入職から3カ月程度は、本人も不安定な時期になっていることもあるので、出来れば月に1回程度、個人面談をされることをお勧めします。面談を通じてチェックシート
を振返って頂き、本人にも現実をきちっと認識して頂くことで「自主的な退職意思」を引き出すことができれば、それが最もいい形です。やはり解雇という扱いとなると諸問題が発生したり、煩雑な手続きも必要なので、事業所としてはできれば避けたいものです。ただ、しつこく「自主退社」をせまるような行為は問題ですが、真摯な話し合いを重ねることで、結果として「自主退社」につながるケースはありますのでお勧めしたいと思います。